BLEACH | ナノ
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いつもの、いつも



「なァ、茉霞ちゃん」
「………」
「そろそろ、うちに来ィや」

ピクッ

書類整理していた手が止まった。そもそも“そろそろ”って何その言い方。まるで私がいつか移隊するのがさも当然のような。念のため言っておくけどそんな予定、これから先もこれっぽっちもないから。

「い・や・で・す」

この人がこうして同じ事を理由に隊舎へ訪れるのは何回目だったっけ。

「茉霞ちゃーん!」
「うぐぅ………っ」

腰辺りにこうして衝撃が来るのもまた何回目だ。そろそろだとは思ってたけど反応速度が少し遅れてしまい情けなくも前のめりに体が傾きかけたが何とか踏ん張った。

「こら、ギン!危ないやろが」
「だって、茉霞ちゃんに会いたかってん」
「仔ギン仕事は?」
「ボク、仔ギンやのうてギンやもん」

もんってなんだもん、て。自分の自己主張だけはきっちりとするけど私の言葉にはにんまりと笑っただけで何も答えない所を見ると、どうやら抜けだしてきたらしい。隊長と隊員揃いも揃って、大丈夫なのか五番隊は。やれやれ、腰に未だ引っ付いたままの小ギンを他所に言い知れぬ溜息が零れる。何で他隊の事で私が頭を抱えないといけないのだ、理不尽すぎる!

「茉霞―」
「なによ」
「そろそろ結婚しよや――――――痛ぁああ!?何すんねん茉霞!」
「茉霞ちゃんナイスや」
「やかましわ、ギン!」

今なんて言ったこの男。ワナワナと小刻みに全身が震えた。目の前の人が隊長だろうがそんなの知った事ではない。

「いや、何か、手が、勝手に、無意識に、動い…た?」
「…お前それで謝っとるつもりやないやろな、どつくで」
「私がどつきたいわ!」
「もうどついたやろが!」

真子の言葉に思わず手にしていた書類の束を自分でも吃驚するくらいの勢いで彼の頭に落とした。ズンッと紙からはとても想像できない鈍い音がして真子がなんか言ってるけどうるさい黙れ。…絶対私、悪くないと思うんだ。

「何やねん…移隊も嫌や言うし、嫁来るのも嫌や言うし。どっちかにせぇや」
「その選択肢に答えが見出せない上に私にとってメリットが感じられない!」

何で私が我儘言って真子の事、困らせてるみたいなことになってるんだ。むしろ困ってんのはこっちの方だ!ふざけんな、ハゲ。ひよ里がよく真子にハゲハゲ言う理由が初めて分かった気がする。確かにコイツはハゲだ。

「贅沢な奴っちゃのォ。こーんなイケメン隊長目の前に何が不満やねん。ちゃーんと面倒見たるわ」

…果てしなくその顔面をひよ里に蹴飛ばして頂きたい。

「ま、エエわ。また来んでー」
「いや、二度と来んな。絶対来んな!」

ほれ、ギン帰んで。とちゃんと仔ギンも回収してくれた所だけは感謝しよう。閉められた扉の向こうで仔ギンの駄々こねる声が聞こえるが知った事ではない。そして真子共々、藍染副隊長にこってりネチネチ絞られればいいんだ。

「は――――っ」

ソファに身を沈めダラしなく背凭れに身体を預ければ近付いてくる足音。

「あいつら何しに来てんだ」
「阿近、アンタそのしかめっ面やめなー。真子みたいな顔になるよ」

冗談で言ったのに心底嫌そうな顔をして見せる阿近がめちゃくちゃ可愛い。労りからか阿近が黙ってお茶を差し出してくれたのでありがたく受け取ればついでに紙束も渡された。

「うわっ、五番隊宛のもあるじゃん」
「副隊長に持って行かせれば?」
「ついでに蹴りも叩き込んでくんないかなぁ」
「頼まなくても副隊長いつも五番隊長に蹴り入れてるだろ」

それもそうだ。何を今更って話だ。

「茉霞さん」
「んー?」
「アイツと結婚すんのか」
「ぶふぁっ!!」

うわ、きたね。お茶を啜りながら阿近から今し方渡された紙束、基書類に目を通していれば彼からトンデモ発言が飛んできてお茶を噴出した。幸い、書類にはかかってない…よ、よかった。かかってたら今度は私がひよ里に怒鳴られる所だ。

「阿近、冗談言うならもっと冗談言う顔をしてお願いだから」

ただでさえ表情が分かり辛いのにそんな事をそんな顔で言われたらお姉ちゃんもうどうしたらいいかわかんないでしょ!阿近の両肩を掴んで訴えれば「しらねぇよ」とスゲなく返された。



(戻ったで――――って何や茉霞、顔死んどるやんけ)
(おかえりひよ里。これ真子に持って行くついでにアイツの顔面蹴飛ばしてきて)
(何やあのハゲまた来たんかい!)
(むしろ真子が来ない日なんてないんですけど!?)
(茉霞さん、五番隊長に求婚されてましたよ)
(阿近言い方!!)
(はぁ!?あのハゲついにハゲた事抜かしよってからに!!ウチに任しとき)
(そこら辺の野郎より副隊長の方がよっぽど男らしいな)
(うちは女や!しばくど阿近!!)