刀剣乱舞 | ナノ
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「…頼みたい事があるんだ」

はた、と動かしていた筆を持つ腕が止まった。いつも無口な小夜だが、今日は一段と思い詰めた様な何かを考えているような表情で主である彼女の部屋へやってきた。どうかした?中々口を開かない小夜へ問いかけてみるも、襖の前に佇んだまま部屋に入る事無く視線は足元に向け両の拳は強く握られたまま。言い出しにくそうな小夜に主は助け船を出して見る事にした。

「何か、言いたい事があるんでしょ?そんな所に突っ立てないで座ってごらん」

くるりと小夜へと向き直り自分の正面に座るように促せば、入り口に縫い付けられていた小夜の足が動いた。ゆっくりと主の前移動し、足を降り丁寧に正座をするもやはり両の手の拳は膝の上で握られていた。しかしゆっくりとその手が解かれていき、耳を澄ましていないと聞き漏らしてしまいそうな程小さな声だったが小夜の口が確かに動く。

「…修行に、行かせてほしい」

一時、主の部屋の空気がピタリと止まった。彼女は小夜の言葉に驚いたまま、数秒間言葉を発せずにいたが珍しく顔色を窺う様な仕草をする小夜を見て薄く開いたままだった口元が柔らかく弧を描いた。

「そっか、小夜ちゃんがね―――」
「…ダメ、だった?」
「ううん、全っ然!ビックリはしちゃったけどね」

実の所、修行を希望しているのは小夜だではなかった。初期からこの本丸にいる男士たちや修行に必要な練度を満たしている刀剣たち。でもまさか、直談判の先陣切ったのが小夜とは露程も想像していなかった為、驚き少しと嬉しさ大半と言った所。

「小夜ちゃん、いつも私のお願いは素直に聞いてくれるけど自分から何かしたいって言う事があまりなかったから。純粋に嬉しくて」

小夜への思いを一通り連ね、小さく息を整え小夜を映した瞳は審神者のものとなっていた。

「―――うん、わかった」
「いいの?」
「ただし――――絶対に無理はしない事!それから必ずこの本丸に帰って来てくれる事、約束してくれる?」


「あなたの為に強くなりたいんだ、あなたのいる本丸に帰って来るよ」

小さい小さいと思っていた背中がこの時は随分と大きく見えた。



(―――――で、僕はいつになったら修行に行かせてくれるんですかね?)
(う…ほ、ほら!宗三さんはまだ練度が…ねぇ?)
(それは貴方が僕を出陣させないからではないですかねぇ)
(ほんっと、すみません!!!)


宗三さん未だに53なんだよね…。