がたたん、ごととん。
電車に揺られて今日も学校へ向かう。いつも通り見える窓の風景。いつも通りの時間。いつも通りの制服。いつも通りのこみ具合。いつも通りの、日常。
全部いつも通りのこと。
当たり前に普通のことだ。



私はとある女子高の2年生だけれど、クラスの子はみんな「退屈だ」ってよくぼやいている。日常に刺激がないのだと、嘆いている。
でも退屈なのはよくないことなのかな。
私は、退屈なくらい普通の方がすきだよ、って友達に言ったら、笑われてしまった。なんでかな。

中学のときはクラスの女の子たちが誰かを仲間外れにすることが多かった。私は怖くて、仲間外れにされないように無理に明るく振る舞っていた。結果、ちゃんと仲間外れにされたことはなかった。嫌な思いはまぁ、ちょっとはあったけど。

でも高校に入ってからはすごく自然体でいられた。『普通のこと』が当たり前にあって、無理に明るくしていた私を埋葬することができた。
私は普通。普通で、幸せなんだ。



最近はそんな事を考えながら電車に乗る。マイナーな鉄道だからいつも空いていて、ちょっと急げば朝でも座れてしまう。だから私は座席の右端を陣取って、毎日色んな事を瞑想をするのだ。


さて続き、と思ったら肩をとんとん、と叩かれた。
見てみると、いつも隣に座っている男子高校生だった。

「あの、」
「は、はい」

じいっ、と見られて戸惑う。
なぜかかぁっと顔が熱くなった。どくんどくんと心臓が激しく脈打つ。今さらながら驚いたのが身体に反映してきなのかもしれない。
あああ目が離せない、なんでだろう、あつい!
沈黙が続く。男子高校生の顔も負けじと赤く、なんとなく涙目に感じた。今まで気づかなかったけど、ずいぶんきれいな顔だ。まつげが長く、きりっとした二重まぶた。しゅっとした鼻に形のいい唇。・・・唇?どこみてるんだわたしは!

「え、と・・・っ?」
「間もなくー、男子校前ー、男子校前です。お降りのお客さまはー」

いたたまれなくなって呼び掛けたけれど車掌さんのアナウンスに掻き消されてしまった。間延びした車掌さんの声に憎しみを憶える。

あ、男子校前って、この人いつも降りる・・・、

「右側のドアが開きます、お近くのお客さまはー」

ぷしゅー、と電車が減速を始めた。
周りもざわざわと降りる準備を始めた。
男子高校生も立ち上がり、すう、と息を吸い込んだ。

「突然ごめん、ずっと気になってたんだ。・・・よかったら、」
「ご乗車ありがとうございましたー。男子校前ー、男子校前です」

ドアが開く。
たくさんの人が流れるようにホームに降りていく。

「連絡、ください!」

ぱっ、とメモ用紙を渡すと同時に、彼は流れる人波に乗ってドアの向こう側に消えた。
彼の姿が見えなくなってから、間もなくドアがばたん、と閉まった。

今の、なに?
・・・今の、なに?

渡されたメモ用紙をそっと、開く。
心臓が再び激しく脈打っていたけど、さっきの比じゃない。うるさい。
メモ用紙には上手とは言えない字で、でも丁寧に丁寧に男子の名前と、メールアドレスが記されてあって。

さっき、わたしのこと、気になってたって。
連絡ください、って。

ぐるぐると同じシーンが頭を巡る。
顔が熱い。生卵乗せたら目玉焼きができるんじゃないかってくらい。
はっと気づくと、周りの人がちらちらと好奇の視線を向けてくる。それがくすぐったいやら恥ずかしいやらで、私はぼすんと鞄に顔をうずめた。


がたたん、ごととん。
電車はそんな私に構わず今日も学校へ向かう。
いつも通り見える窓の風景。
いつも通りの時間。
いつも通りの制服。
いつも通りのこみ具合。
いつも通りの、日常。
全部いつも通りのこと。

そんないつも通りの普通な私に、いつも通りじゃない刺激が、やってきてしまいました。















(ラブストーリーは突然に、)
(・・・・・・って小田和正か!!)





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