白い光が街全体を照らし、次第に熱を孕ませながらわたしたちに朝を、知らせる。
霞がかった街並みを見渡すと、開けた窓からつめたい風が吹いてきて、わたしは思わず目を細めた。

何時間も座っていたから、ベッドのシーツにはわたしの体温が移っていて、あたたかくなっていた。
膝ごと毛布をぎゅっと抱きしめ、それに顔をうずめる。

すうっと息をすいこむと。
かぎなれた、においがした。

自分のにおいと、あの人の、2つがまざったそれ、は、わたしのいちばんすきなにおいで。
もう過去にしか存在しないにおい、で。


わたしはせきを切ったように、ないた。


こどもみたいに声を張り上げて、わあわあ、わあわあ。
白いシーツと黒いスーツに涙が染み込んだけど、そんなの気になんかできなくて。
苦しいくらい胸いっぱいに広がる愛しさと、寂しさ。
いっそこの苦しさで、あなたの元へとんでいけたらいいのに。
昨日の11時にあなたが向かった青空に、わたしも。



ねぇ、神様。
どうしてあの人だったの?
わたしならよかったのに。
どうしてあの人をつれていったの?
ほかのだれでもいいよ、
どうして、あの人を。

あなたのそばにいきたいよ。
あなたのにおいのするわたしたちのへや。
どんどんうすれて、いずれ、消えるかおり。
消えていくだけの、あなたのおもかげ。

ああ、せめて、
わたしの傍にいなくても、生きていてよ。
どこかで、息をして、生きて。

でも、もう。





呼吸をする回数に比例して、涙はあふれでてくる。
ぼんやりした朝はいつの間にかくっきりとした輪郭のそれにかわっていた。
悲しい悲しい、青。
愛しい愛しい、青。
あなたの居る、青空。

わたしはそっと手を伸ばした。
わたしを見下ろすそれは、冷たくて温かい色をしていた。
















(絶望の入口か)
(それとも、)








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