「晴れてよかったなァ。」
空に向かって思わずひとりごちる。
お日様がはりきりまくって見事に快晴な今日は、ヨーコとケンタの結婚式だ。



二人は笑顔で恋人に終止符を打ち、夫婦にスタートを切った。
幸せそーッに笑う二人を、周りは同じように幸せそーッに祝福している。
ライスシャワーと白い花びらと拍手が二人の周りを舞っていて、
やっと終わったんだなァ、
と頭の中でつぶやく。



もう全部、過去になった。
死にたくなってて28時間部屋にこもったあの日も。
耐えきれなくなってケンタの顔を殴ったあの日も。
ヨーコが泣きながらあたしン家で懺悔したあの日も。



―――ごめんね、サエ。ごめん。

涙目に押し当てられるヨーコの手。
(ヨーコ、白い細い手。)
(あたし、茶色いゴツイ手。)

――サエとの仲を壊したくない。ごめん。勝手だよね。

太モモに涙が落ちる。
(ヨーコ、ピンクミニスカ。)
(あたし、ヨレヨレGパン。)

――ケンタも大切だけど、サエも本当に大切なの。

震える体に合わせて揺れる髪。
(ヨーコ、茶パツふわふわ。)
(あたし、ごわごわ黒ロング。)



あたしの愛するヨーコの愛するケンタはヨーコを愛してて、更にケンタはあたしが8年間愛して愛して愛して愛したオトコだった。

チクショーッ、こんなオンナらしいオンナがタイプだったのかよあいつ。
あーあ、ならあたしもオンナらしく振る舞っときゃよかったんだな。
って今更遅ェーよ付き合ってる時に言えよッ。

って思った。正直。
恨んだよね、ヨーコもケンタも。
ヨーコが家に言いに来たのは二人が付き合ったのを知ってから3週間も経った後だったし。
当時は許してやるもんかよって思ってたんだ。
こんなに愛したオトコをとったこと。
こんなに愛したのに他のオンナを選んだこと。
こんなもんなのかよって。
今までの8年はなんだったんだよって。


でもさァ、
でもさァ。
納得もしちゃったんだよ。
ケンタがあたしと別れて次の日ヨーコと付き合ったのを聞いて。
ああ、なるほどなァ、て。

あたしがどんなに努力したってヨーコにはなれない。
あたしン中で一番輝く可愛いオンナはヨーコだから。
ヨーコなら仕方ないよなァ。
あたしだって惚れてるンだもんなァ。
ヨーコはあたしの憧れであたしの個性を誰より愛してくれてあたしの親友だ。
あたしはケンタと同じくらいヨーコを愛してて愛してるんだよ。
他のオンナに愛しのケンタをやるくらいなら、愛しのヨーコに愛しのケンタをやるよ。
他のオトコに愛しのヨーコをやるくらいなら、愛しのケンタに愛しのヨーコをやるよ。


そのくらい愛してるんだよ馬鹿野郎共。


ヨーコが家で懺悔した日、結局二人で肩抱き合って号泣した。
ヨーコはずっと「ごめんね」って言って、あたしはずっと「謝んな」って言って。



あれからもう1年ちょっと経っていて、二人は1年3ヶ月の交際期間を経て見事ゴールインしましたとさ。

二人から結婚することを聞いた時は、悲しくなかった。
驚いたけど、悲しくなかった。
笑ってしまった。

悲しくなんかないよ、ヨーコ。
辛くなんかないよ、ケンタ。
幸せになれよ、愛してる。


あたしも大人になったんだなァ、と思う。
二人を見てるとなんか、くすぐったくて暖かいよ。
嫉妬じゃなくて、羨ましいよ。
あたしも二人みたいにピッタリの相手ほしくなったよ。
ヨーコもケンタも凌駕するほど愛する人がほしくなったよ。
そーだな、身長は180以上で稼ぎがいいのが条件。
そいつのために毎日飯作ろう。
毎日毎日飽きるほど作ろう。
たらふく食わせたら毎日ヤろう。
飽きるほどヤって飽きるほど愛そう。
飽きるほど愛して飽きるほど愛されよう。


きらきら輝くヨーコとケンタ。
あたしもいつかその真ッ白なドレス着て真ッ赤なバージンロード歩いてライスシャワーと白い花びらと拍手浴びるんだからね。
そんで高収入で180センチでスーツが似合うイケメンメガネを隣に歩かせて、みんなの目の前で濃ッ厚なキス見せてやるよ。



それまでグッバイ、マイラバーズ。
愛してるよ、一生。
あ、違った。
イケメン180メガネに出会うまで、ね。




















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