Other Story
今、呼んだよね?
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3年2組の教室の角。
昼食は決まって二人で食べることが多い。
たまに、食堂に行けばバレー部の天童覚に捕まる。
そしてなぜかバレー部と食事をする。
でも普段は、こうして名前と話をしながら食べる。
「花って、部活してるし…彼氏といつ会ってるの?」
「部活終わった後だよ?」
買ってきたサンドイッチを頬張る花。
名前は自分で作っているお弁当を見て「そうなんだ…」と言う。
少し様子がおかしいな、と感じた花が尽かさず「天童と何かあった?」と聞く。
ピクッと身を動かした名前は頬をほんのり赤くする。
…あの天童が、なんで名前をこんなに可愛くさせることができるんだろ…。
花の心の中では天童は常に標的である。
「ん〜…その…」
「何?」
言い難そうにする名前に身を寄せる花。
「キスって、どこでするの?」
「……え?」
まさかの質問に拍子抜けした花は名前を見て数回瞬きをした。
「っ…だって天童どこでも…」
「ストップ!はい、名前ちょーっと黙ろうか?」
名前にしっと人差し指を立てると彼女は大人しくコクコクと二度頷く。
「普段どこでしてんの?」
「…人がいないところ。」
「というと?」
「最近は…試合前に、」
「はぁ?試合前ー?舐めてる。」
「いやっアレは私がその…誘ったというか…」
段々恥ずかしくなってきたのか語尾につれ声が小さくなっていく名前の言葉に、花は「でも名前がキスしたいって言ったわけじゃないんでしょ?」と問う。
「それはそうだけど…そうでもないかも…?」と少し困った顔をする名前。
ふうっとため息をついた花は
「天童に事情聴取するか。」
と言ってパックのジュースに手を伸ばしたとき、
「今、呼んだよね?」
どこからやってきたのか、いつの間に食堂から帰ってきていたのかもわからない天童の姿。
花は「呼んでない。」と冷たくあしらう。
「ウソッ呼ばれてなきゃやってこないヨ?覚くんは。」
「あ、そう…って、なんで近づいてくる。」
「花ちゃんさ〜俺を邪魔者にしないで。俺も混ぜて女子トーク。」
ご機嫌な天童。
声にいつにも増して抑揚があるのですぐわかる。
「あんた女子じゃないでしょー?」
「ケチだなぁ〜花ちゃんは。でも俺のことスキなの知ってるよ〜」
「…天童には花もお手上げなところあるよね。」
名前がくすくす笑っている顔を見て、天童を見ると悔しい気持ちが出てくる。
「ねぇ、どうしたら可愛い名前を引き出せるの?」
「え?それは俺と関わってるからじゃない?」
ケロッと言って退けた天童に、花は「あんたほんとその自意識の素晴らしいこと。」と嫌味を含めて言うも、彼は嫌味とわかっていながら「デショ〜?俺そういうとこあるからモテちゃうのかもネ。花ちゃんも見習っちゃう?」と花の顔色を伺う。
「…いや…無理。」
「その生理的に無理みたいな身の引き方やめてっ」
クスクス笑う名前が「花と天童の話って面白いよね。」っと言えば「え〜そう?」と満更でもなさそうな天童とは反対に花は「コイツと話してると普段より数倍エネルギー使う…」と頭を抱える。
「じゃあ、天童。ちょうどいいや。今からあんたの事情聴取を始めるから。」
「エ…何?事情聴取って…コワいんだけど…」
きょとんとする天童の肩は落ちている。
「覚悟しなさい、天童覚。あんたが名前にしてきたこと根掘り葉掘り聞いてあげるから。」
「エンリョする。」
「こういうときだけ遠慮すんなっ女子トークしてるところには入ってくるくせにーっ」
「だぁって聞きたいじゃん!名前ちゃんが俺の好きなところを話す唯一の場じゃん!」
「名前大好きかっ」
「大好きだよ?当たり前じゃん。」
ああいえばこういう天童と花の二人を見て、名前はとうとう苦笑いをした。
-END-
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