向き合うしかない
嘘に決まってる
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会話はするけど、そこまで深い仲にはならないような人物だと思った。
…違う、思ってただ。
「まさか、これほど早く、そしてこれほど近い存在で…」
―見た目とは裏腹に予想外なことしてきて…感情読めなくて…振り回される恋なんて…あるかなぁ。―
部屋のベッドで寝転がって、天井を見つめる名前。
「ほんと、予想外の展開を起こしてくれた…天童。」
まさかクラスメイトの分際で、キスするなんて…
「なんてヤツ…」
でも…
「待ってたんだろうな。こういうのを。私は。」
抱き枕をぎゅっと抱きしめてベッドでゴロゴロする。
ぴたりと止めれば、ボーっとしてキスを思い出す。
思い出すだけで、ドキドキする。
「…天童か。」
あまり、深く考えたことはなかった。
男子バレー部で、レギュラーだということは知っている。
そして、クラスではムードメーカー。
とにかく明るい、元気。良く喋る。
背が高い、細い、手足長い。
バカっぽくて、実は出来る奴。
予測不可能な男、天童覚。
恋する相手にしては、知らないことだらけ。
「まだ、恋したわけではないよね。」
―え、俺好きだよ?名前ちゃん。―
「…嘘に決まってる。」
女をとっかえひっかえしてた人だ。
あぁやって、私を彼女にさせる気なんだ。
「なるほど…そうして女の子たちは遊ばれて捨てられてを繰り返してるのか…天童なんてヤツ…。」
私は、そう簡単には落とされません。
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