Other Story
先生、恋人いる?
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白鳥沢学園高等部の校舎の上は、雲一つない快晴。
真っ青な空が広がっている。
ボーっと空を見上げている名前の耳に入ってくる数式。
現在、3年2組では数学の授業中だった。
天童の視線の先には、若いイケメンと言われる高上先生は女子生徒には人気の先生で、少し憎い存在だ。
チラッと名前の様子を見る天童。
愛しの彼女はボーっとつまらなさそうに窓の外、空を見上げている。
飛びたいなぁ、とか考えてそう。
そんなくだらないことを考えたとき、ピンときた天童。
「ハーイ!先生!」
「…はい。天童。」
シーンとしていたクラスメイトたちの眠そうな顔が「なんだなんだ」と覚醒していく。
ガタリと立ち上がった天童に、花はゲェと嫌な顔をする。
名前も少々騒がしくなった教室内に視線を向けた。
天童を見れば、みなが思う…
何かやらかしてくれる。と。
「先生さ、恋人いる?」
「「!!」」
実は、女子生徒も聞きたい先生のプライベートな質問だったソレは、女子生徒にとってとても聞きたい話で、人気な先生だからゆえの質問をした天童。
ナイス!天童!!
そう思う女子生徒も少なくなかった。
名前は「何でそんなこと知りたいんだろう…」と天童の姿を呆れながら見る。
花は花で少し先生のプライベートに興味津々な面持ち。
この時ばかり天童を「たまにナイスなことしてくれるじゃない!」と心の中で褒めていた。
先生は教科書を教卓へ置くとニコッと笑顔を見せる。
「天童。今は何の授業だ?プライベートな質問は授業を終えてからにしなさい。」
そう言った後の先生の目は、笑っていなかった。
しかし天童は食い下がらない。
一度立ったら、もう聞くまで、だ。
「先生が恋人いるんだったら、俺ちょっと相談したいことがあるんダヨネ。」
「!!」
その言葉に反応したのは、クラスの誰でもない、まさに彼の恋人である名前だ。
何言うつもり…とドキドキしながら見守る名前とは裏腹に天童はニコニコしながら「俺の彼女、このクラスにいるんだけどネ?」と話し始めたではないか。
ドキドキより冷汗が出てきそうな勢いで不安になる名前。
恥ずかしいことつらつら述べられてはたまったものではない。
「最近付き合いたてホヤホヤなんだけどさ〜?まだチュー出来てないわけよ。」
「!!」
クラスメイトを見れない…。
名前は必死に他人のフリをする。
「先生ならどうするかなぁ〜?と思って。あ、そもそもカノジョいる?」
花は名前どうこうではなく、もう天童の言葉に興味津々。
先生、どう答える?とクラスメイトもそちらへばかり神経が走る。
当の本人である先生は「う〜ん、そうだな。」と真剣に考える様子を見せる。
「彼女の話はともかく…俺なら、二人っきりになれた瞬間に…甘い雰囲気にはもっていくだろうな。」
「「…。」」
女子生徒は、すぐ妄想を始める。
高上先生が…甘く…。
ぽぉっとする女子生徒たちを他所に天童は名前を見ると
「名前ちゃん、俺たちも甘い雰囲気になってみる?」
なんて言った直後、名前は窓の外の青い空を見て思う。
太陽はやく隠れないかな…教室ごと暗くしてほしい。
そして私の姿を今すぐ見え無くしてほしい。
「私、天童の彼女じゃないから。」
「えぇえ?!」
-END-
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