shootingStar[完結] | ナノ
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覚悟はできてる?

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「覚悟はできてる?」

「おう、いいぞ。」


天童と瀬見が見つめ合い、


「じゃあ。行くよん。」


そう言って天童の手から出された3枚のカード。
それを見て瀬見がギョッとする。


「おい、なんか一枚増えてんぞ。」

「増えてるな。」

「エ〜?気のせいだと思うよ?」

「気のせいなわけあるかっ」


お昼休み、天童のクラス3年2組ではバレー部の面々が天童の机の周りに集まっていた。

昼食を食べながらその異様な光景を見る花が「何やってんの、アレ?」と同じくお弁当を食べている名前に問いかける。


「トランプ。」

「トランプ?なんで…」


名前が今朝登校すると、すでに教室にいた天童。


「おはよ。」

「名前ちゃん。見て見てっ」

「ん?」


席に向かう前に、天童に呼び止められそのまま彼の机へ身を寄せた。
その机にあるカードを見て思わず「なに、これ…」と苦笑いする。


「罰ゲームカードだよ。」

「罰ゲーム?」

「うん。」


カードには「“覚くんのマネをしてみよう”」と書かれている。


「天童のマネかぁ…」

「名前ちゃんできそう?」

「ゲスいこと言えばそれだけでもう…」

「いや、それチガウと思う。」


「何でよ。」と天童と会話をしているところに、花が「おはよー」と教室に入って来た。


「でもそれ何に使うの?」

「今日ね、部室掃除があるんだけど…レギュラーメンバー全員もいらないじゃん?むしろ、動きにくい。だから、いつもトランプで勝負して決めるんだけど…今日はちょっと小細工してみた。」

「…それは、いつ入れるの?」

「最後の方になったときダヨ。」


その時、がばりと名前の背後から抱き着いた花が天童の手からそれを取り見る。


「花、おはよ。」

「天童のマネか〜“名前ちゃん”って言っとけばいけるんじゃない?」

「私もゲスいこと言えば大丈夫だと思った。」

「二人ともわかってないねぇ〜」




「あぁ、アレ、トランプだったんだ。天童のお手製罰ゲームかと思ってた。」

「まぁ、間違いなく罰ゲームだよね…本人も言ってたし。」


そう言って二人の視線が天童の席の群れへ。


「瀬見、はよ引け。」

「いや…だって増えた1枚何か気になるだろ?」


山形に催促される瀬見。
天童はニコニコした面持ちで瀬見の行動を楽しんでいる。


「それは、引きたいのカナ?」

「引きたくねぇんだよ。」


山形が天童の手の中にあるトランプを見て「うわぁ」という顔をした。
その表情を見た瀬見は「何、どういう系のヤツ?」と問いかける。


「罰ゲームだな。」

「絶対回避してやる。まさか3分の1の確率に苦しめられるとは思わなかったけどな。」

「でもさ〜違うの引いたところで英太くんが上がる確率も3分の1ダヨ?」


天童の手にはババとダイヤの5、そして天童お手製罰ゲームカード。
瀬見の手にはクローバーの5が握られている。


「まだババ引いた方がマシだと思えば確率は上がるヨ?」

「てめぇふざけんな。そういうのもうどーでもいいんだよ。」

「怖い。英太くんがイラついてるの久しぶりに見た。」

「あんたがイジメるからでしょーが。」


隣にいる大平に苦笑いされる天童。
その時、天童の肩にポンと手が置かれた。

天童が、あ、いい匂い。と思った直後、罰ゲームカードが取られる。


「名前ちゃん…」

「瀬見くん、どーぞ。」

「!!」


そう言って天童の両手を名前が出す。
天童はもうトランプどころではない。


「名前ちゃん、きょういい匂いすんね。」

「え?そう?」


そんな会話を繰り広げている二人の前では瀬見がそっと立ち上がり天童の手にある2枚のうち1枚を瞬時に引いた。


「…じゃあ天童掃除よろしく。」

「え?」


名前に夢中になっていた天童の手に残っているのはババ。


「…アレ?」

「どんまい。」

「どんまいじゃないデショ。名前ちゃん…」

「私はやっぱり正々堂々と勝負する天童が好きだな。」

「…。」


その言葉に、天童は「もう俺こういうことしないや。」と言った。


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