Other Story
どんだけ好きなんだよ
▼ ▲ ▼
白鳥沢学園、バレー部部室。
そこでは、強豪と名の知れた部のメンバーがバレー以外のことでも話が繰り広げられる。
「ねぇ、英太くん。」
「ん?」
着替えを終えた天童がパイプ椅子に座ってギィギィと嫌な音を立てている。
着替えの途中である瀬見を見たまま首を傾げた。
「何で英太くんは彼女できないんだろうネ。」
「なっ!うるせぇなっ」
「だって、カッコイーじゃん?イー体してるじゃん?」
瀬見は天童の言葉に何も言えなくなる。
部分はどうあれ褒められたことに嬉しいと感じる。
「勿体ないよね。その身体、女の子が誰も知らないなんて。」
「ちょっと喜んだ俺がバカだったわ。…つか身体はやめろ!せめて顔にしろっ」
天童は「エ。何で!」と大きな目をさらに大きく見開けば、すぐ遠い目をして「その顔と体があれば英太くんは女の子を虜にできると思ったんダヨネ〜」とワイシャツの袖を捲っている瀬見を見つめる。
「ってか、なんでそういう話になった?」
瀬見の問いかけに、天童は視線を思いっきり逸らして眉間に皺を寄せた。
「名前ちゃんが、英太くんのことカッコいいって言ったんダヨ?信じられないよね!?」
「…え?マジ?」
「すげー嬉しそうだな。瀬見。…天童は、信じられないってどういうことなんだ?」
大平は、天童は先ほど瀬見はモテてもおかしくないというニュアンスで話していたのに、言ってる言葉がおかしいと笑う。
「だから英太くんに早く彼女作ってもらおうと思って。」
「…なんだコイツ。ほんと落とすの上手いな。」
喜んでいた瀬見の耳に入って来た天童の言葉に、気分を急降下させられた彼はなんとも言えない顔をする。
「だってまだ名前ちゃんのこと自信持って“奪えるもんなら奪ってみな”なんて言えないしさ〜。」
「絶対それキャラ違うだろ。」
ケラケラ笑う瀬見に対して天童は「いつか言いたいよね!俺の願望!」と立ち上がる。
「あ。名前ちゃんに電話しないと…!」
「何を話すんだよ。まだ部活しか話すことねぇだろ?…あ、今日若利をドシャれなかった話でもすんのかー?」
「カッコいい話しかしないし!」
「カッコいい話ないだろーが。」
「…英太くんをイジメると逆襲がすごいんだよねぇ。いつも。」
目を瞑って呆れる天童を見て、笑う瀬見。
さらにそんな瀬見を見た大平が「瀬見は天童と対等に言い合える仲だよな。」と話す。
瀬見は「読めねぇから言えるとこで言うようにはしてる。」と話す。
「調子に乗らせるとどんどん陥れられるから恐怖を避けたいがゆえの対策を身に着けた。」
「すごいな。」
「彼女には勝らないんだろうけどな…いつか伝授してもらおうと思ってる。」
そう言って荷物を持った瀬見の背後ににゅっと現れた天童。
「まだダメだよ?」
「っ…どっから出てくんだよ、こえーわ。はやく彼女に電話しろ。」
「名前ちゃんご飯食べてるかもじゃん?そう考えたら後ででもいっかなぁ〜って。」
「ごはんって…そこまで考えるか?普通。」
「どんだけ好きなんだよ。」と呆れる瀬見に天童が「え〜計り知れないくらい?」と瀬見に問いかける。
「いや、わからねぇわ。」
「じゃあそれくらい。」
「あーはいはい。わかったから行くぞ。」と天童の背を押して部室を出る瀬見。
大平もそんな二人を見て共に部室を後にした。
-END-
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