予測不可能なキミ-epilogue-
愛
▼ ▲ ▼
インハイを見事、勝利へ導いた白鳥沢男子バレー部は数日後、いつも通り練習を行っていた。
「〜♪〜」
「…えらくご機嫌だな、天童。」
「えっわかる?!」
目をパチッとさせ、大平を見る天童。
ボールを持ったまま目を細めると「名前ちゃんがさ〜」と彼女の話を始めた。
天童が名前と付き合ってからというもの、毎日何かある毎部員たちに話をする彼。
その話がここ最近、部員たちの表情を一瞬で変えてしまうものとなっていた。
「リアル充実話ですか。」
「彼女がどうしたんだ?」
「それ今話さなくていいやつですよね。」
「天童、ボールを渡せ。」
「…纏まりなさすぎデショ。」
川西、瀬見、白布…そして全く関係のない要求をしてきたのは大エース牛島。
言うだけ言えばみんなバラバラと散る。
残ったのは瀬見と天童の背後に大平。
「英太くんは聞いてくれる?!」
「惚気なら聞いてやらねぇぞ。」
「…。」
げんなりした顔を見せた天童。
ぐるっと振り返った先にいる大平。
「獅音くん。」
「俺は聞くぞ。」
「!!」
ぱあっと表情を明るくした天童。
大平はニコニコと優しい面持ちで天童の話を聞こうとしている。
「きょうね、俺の携帯の待ち受け画面名前ちゃんにバレたんだけどネ?」
「あぁ〜アレか。大丈夫だったのか?」
「それがね〜」と天童は思い出しながら話す。
教室で携帯を置いてペラペラ話していた天童。
その携帯がメッセージが来たことを知らせた瞬間、名前の視線がそちらへ。
ギョッとした顔をする名前を見た天童が「…見た?」と恐る恐る問いかける。
「っ…いつの間に…」
「え〜寝てた時ダヨ?」
「それはわかるけど!」
「何々?何事?」
花が購買から帰って来た。
顔を真っ赤にする名前を見た花は、天童を見る。
天童は花にその画面を見せた。
花も思わず顔を赤くする。
「良いでしょ〜」
「良くないわ!!それ、恥ずかしすぎるっ」
「え〜…花ちゃんも欲しい?待ち受けにしちゃう?」
「バカッ」
名前が相変わらず真っ赤な顔をして天童を睨む。
「可愛いデショ。俺目線の名前ちゃん。」と天童は言う。
天童の待ち受けにされている画像は、名前が幸せそうに眠っている顔だった。
名前は「…消して。」と言う。
天童は「エー。消すわけないじゃん。めっちゃ可愛いし。」とケロッと言ってのける。
「じゃあせめて変えてっ」
「ヤダ。」
「なんでっ」
「愛ダヨ、愛。」
その直後、名前は何も言えず黙り込むと同時に椅子に腰を下ろすと呟いた。
「『天童のバカ。』だよ。もうヤバいよね。超可愛かったんだからその時の顔!」
「大好きなんだな。」
「大好きじゃないよ。」
「ん?」
「愛してるダヨ。」
そう言うと、牛島の背に駆け寄り「若利くん。それ俺のボールだよね?」と先ほど取られたボールを取り返しに行った。
大平はふっと笑うと「幸せそうで何よりだよ。」と呟いた。
-END-
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