遠い存在が近くなる瞬間
部室での会話A
▼ ▲ ▼
「あ、有名人。こんにちは。」
天童が部室に入れば、そう白布が言った。
「有名人ダヨ〜」
「ふざけてないで早く着替えなさい。」
「はぁい。」
大平にぽんと肩に手を置かれ、大人しくなる天童。
そのまま着替える天童の背で、背を向けて瀬見が「やっとか。」と呟く。
「やっとだよね。ほんと。」
上裸の状態で手を止め目を細めた天童。
「天童にしては長期戦だったんじゃねぇの?」
「誰から見ても長期戦だったダロ?!」
瀬見の言葉に身を回した天童。
「え〜そうですかね。」
「賢二郎〜?」
「先行きます。」
「アッ逃げた!!」
絡まれる前に逃げるように部室を出て行った白布。
瀬見は苦笑いしながら「まぁ、よかったじゃねぇの。」と天童を見た。
「ん〜そだね。」
「…なに、もっとテンションMaxで来ると思ってたのに、いつもに増してむしろ元気ないんじゃねぇの?」
瀬見が心配そうに天童に問いかける。
「だって…」
「?」
顔をそろっと瀬見へ向けた天童。
その顔を見てぎょっとする瀬見。
「鍛治くんに呼び出されてるんダヨ?これが普通でいられるかって話…」
「あー…悪かった。」
瀬見は“絶対今朝の噂聞いたんだろうな…”と天童の身を案じた。
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