shootingStar[完結] | ナノ
夜空に星が瞬く-prologe-
続かない理由 side.覚

▼ ▲ ▼


片想いが楽しい。
手に入れてしまえば、冷める。

ドキドキがない。
でも結局、長く付き合ったならそれは…なくなる。


ここは、白鳥沢男子バレー部の部室。
現在、俺の噂が学年中(?)で広まっている。

“女の子と付き合っては、別れて…付き合っては、別れてを…繰り返している”と。


それもそのはずだよ。
現時点で、もう目の前の彼女に飽きが来ちゃってるからね。
また乗り換えちゃうよ。


噂、ぜーんぶ事実だよ。


「…なんか、つまんないネ。」

「え?」

「…欲を満たすことは気持ちイイけど、それだけになっちゃったね。オレ達。」

「天童?」

「…別れよっか。」


乱れた制服。
目の前の彼女の綺麗な肌は、そりゃ魅力的なものに間違いはない。

でも、彼女の姿を見て、ドキドキとか…きゅんとか…

したことなかったんだよ。



「なーんでこうも続かないかね。」


着替え終わった俺はパイプ椅子に跨り、ギィギィと揺らしながら、みんなが着替えるのを観察する。

バサッとシャツを脱いだ英太くんの体をまじまじと見つめた。


いー体してんねぇ…それに、いー顔もしてる。
これだから英太くんは…。


「飽き性なんだろ。」


…ナンダッテ?


「え〜それはないでしょ?」

「なんでだよ?」

「だって俺何十年もブロックと御付き合いしてきてるもんねぇ」

「それと女は別だろー?」


「えーそーかなぁ?」とぼんやり考える俺に獅音くんが「じゃあなんで天童はブロックには飽きないのか、に答えが隠されてるんじゃないか?」と言う。


「ホォ。」と口を縦に開ける。


「同じ話しならだけどな。」と付け足す獅音くんには目もくれず、俺はそれなら!とパッと明るい顔をした。


「楽しいから!ブロックした時の相手のセッターとスパイカーが悔しがるカオが堪んないってもんじゃないよね、最高なんだよ。」


その言葉を聞き、部室がぴしゃっと張りつめた空気になった。

1年の五色が恐る恐るぼそりと呟く。


「…ドS?」

「誰だ?天童に“下衆の妖怪”ってあだ名付けたヤツ。よく分かってんなー。」


笑みを浮かべながらネクタイを結ぶ英太くんの言葉に敏感に反応した。


「英太くん。そのあだ名違うよー?俺はGuess Monster。“推測”するほうだからね。」


再び、しんと、静まり返る部室。


「…あ、わかった。」


俺がそう呟いた。


「俺が読める子はダメ。つまんないから。でも全く読めない子もつまんないからダメ。」


「わがまま…」と獅音くん。

「そんな事言ってると結婚出来ねぇぞ。」と英太くん。


俺はその言葉に、目を見開いた。


「えっ、俺子ども欲しい。」

「子どもが欲しいならその辺の公園行って一緒に遊べ。」

「もちろん大好きな子との子どもだからいーんだよね。」

「…天童さん、そろそろ黙りませんかね。うるさいです。」


黙って聞いていた賢二郎がはっきりとした口調で言った。
そしてため息をつくと、俺を見た。


「つまりは、飽きない相手が欲しい。でしょ。」


部室に神々しい光が放たれた。


「おぉ!白布が天童に助言した。」

「そしてその飽きない相手とやらは、ブロックと何十年も付き合ってきたことから得た、天童さんが得意とする予測して、叩き落とし、得点を得る。さらには相手の心を折ることができる。」

「そそ!全部が最高なんだよね〜よくわかってるねー賢二郎。」

「まぁ…天童さんに勝つには、読ませないことですね。」

「でも俺は読んじゃうんだなぁ〜」


この時、英太が静かに笑っていたのを、俺は知ってるよ?




いつも、ただのクラスメイトで終わってた。
その子には彼氏がいた。

だよねーかわいーもんねー。だと思った。

その時は、それで済ませることに必死だった。


いつからだろうね。

キミをここまで、知りたいと思ってたのは…。



「好きでもない人にキスするの?」

「え、俺好きだよ?名前ちゃん。」

「…本心?」

「もちろん!」



俺に、必死になればいい。
ただのクラスメイトから、一人の男として見て…そして…



「言い訳しろって言ったの時穏ちゃんデショ?だから言い訳のキスしてみた。」



本気で、レンアイとやらを、してみようよ。


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