shootingStar[完結] | ナノ
線のその向こう側
様子

▼ ▲ ▼


着替えを終えたバレー部の面々が揃いも揃って各々の教室へ向かう朝は恒例のこと。
その集団が醸し出す雰囲気は周りを寄せ付けないものとなっている。

しかし、見て何を言おうが人の自由だ。


『瀬見先輩カッコいい…!』

『きょうも朝から見れて嬉しいっ…』

『お、バレー部。』

『牛島だ…』


男女関係なく目を止める彼らは間違いなく校内の有名人だろう。
そんな有名人の中では一体どんな会話をしているのだろうか、と考えた者も多くいるだろうが…その会話は恐らく存在しない。


「いつもの天童らしくねぇな。」


瀬見がそういうと、天童はその意味を読んでげんなりとした顔と共に肩の力を抜いた。


「英太くんは、俺を何だと思ってるの?」

「ゲスい奴。」

「デジャヴだわ、コレ!」


「前にもこんな会話したよねぇ〜」と呟く天童は、瀬見から見れば明らかに様子がいつもと違っていた。


「英太くんは、ゲスければ誰でもすぐ手を出すと思う人なのカナ〜?」

「いや…それは冗談としてさ。相当好きだろ?苗字のこと。好きになればなるほど…だろ?」


天童の顔色を伺うように視線を向ける瀬見。
天童は遠い目をして「英太くんはわかってないネ。」と言う。
突然の上から目線発言に「ハァ?」と眉間に皺を寄せた瀬見。


「逆ダヨ。」


天童のその一言に、耳を傾けていたらしい大平が視線を上げた。
その視線の先にはどこか凛とした天童の表情があった。


「好きな人だから、簡単にできないんダヨネ。」


嘘偽りのない、本心だと瀬見も大平も思った。
天童は「なーんて言っちゃう俺カッコいい!」と階段をぴょんぴょん駆け上っていく。


「台無しだな、ホント。」

「なんか羨ましいな。」


大平は苦笑いし、瀬見は微笑ましく天童の背を見つめていた。


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