線のその向こう側
朝練
▼ ▲ ▼
早朝の体育館。
強豪校だけあってどこの部活も朝練をしている。
その中の一つ、バレー部ももちろん朝から汗を流していた。
コートではミニゲームが行われていた。
白布がセッターのチームにいる天童は、相手である瀬見がセッターを務めるチームの動きを見てにやりと笑う。
スパイカーは3人。
瀬見がトスを上げた瞬間には完璧なブロック位置にいた天童。
スパイカーの五色のクロスを叩き落した。
「っ…くっそ…」
「英太くんバレバレ〜工も、ブロック嫌だよね〜わかるよ〜しかし!強行突破しようったってそうはいかないもんねぇ〜」
「…天童さん今日全部当たってますけど…午後大丈夫ですか?」
「ぎくっ」
白布に呟くように言われた言葉を聞いて肩を震わせた。
「だーじょうぶ。俺を誰だと思ってるの?」
「…。」
次の攻撃に備える白布。
「無視?!」
「ブロック!」
「あ。」
天童の真上を勢いよくボールが通過していった。
床にたたきつけられたそれを見てはぁとため息をつく天童。
「コルァ〜!覚ィィ!!ふざけるな!」
「ハイ…」
その後も、体育館に怒号が響き渡った。
「あぁ…一段と疲れた気がする…なんで?」
「きのう女抱いたからじゃねぇの?」
「エ?」
「な、なんだよ。」
朝練を終え、部室にて着替える部員たち。
天童の言葉に瀬見が平然と言ってのけたが、本人はジロッと瀬見を見た。
その目に、身を引く瀬見。
天童は正面に向き直って鞄をゴソゴソと漁る。
「抱いてないよ。昨日、たぶんだけど。記憶にないもん。」
「え…え?まじ?」
「まじ。」
瀬見は「はぁあ?」と顔を引き攣らせた。
「それであのブロックなのかと思ったぞ。」
「悪いけどアレは俺の実力!」
「…。」
清々しいくらい自信満々に言って退ける天童を哀れな目で見つめる瀬見。
苦笑いをする大平がいた。
[ 47 / 70 ]
prev | list | next
しおりを挟む