shootingStar[完結] | ナノ
関りは避けられず
関わり

▼ ▲ ▼


「名前ちゃんに、どこまで惚れたらいいの、俺。」


どこまで惚れたらいいの…って。
本気なのかな…?


少し、戸惑った。
それは多分、あまり好きになってしまうと…いけないと思ってる自分がいるから。


先ほど天童と別れ、隣の女子寮へ向かった名前。
門にはすでに寝衣姿の花が立っていた。


「天童のヤツ、本気だったとは…いや、わかってたつもりだったんだけど…バレーのこと、話したの?」


女子寮には普通に玄関から堂々と入ることが出来た。
恐らく、男子だったら男子寮へは簡単に入ることができるのだろうなと、くだらないことを一瞬思った。

どう足掻いたって、一瞬男になることなんて、出来っこない。


「ねぇ、名前?聞いてる?」

「え?な、なんて?」

「…はぁん?名前ちゃんの脳内はもう天童覚のことしか頭にないんですね?」


ぼーっとしていた名前を花はニヤニヤとした顔で覗き込む。
首を横に振ると「いや…コソコソして入ってると…どうしても罪悪感があって…その割に、嬉しかったりするんだけど…」と複雑な心境だと言う名前の気持ちを聞いて、花は弄ることを辞めた。


「天童のこと、だいぶわかった?」

「ううん…さっきもちょこっと部屋にいたけど…それだけで知らないこといっぱい知れたよ?でも、まだまだわからない。」

「アイツ自分のこと、自分から話すヤツじゃないからねぇ…でも、興味持ってくれてるってことが分かれば、凄い喜ぶと思うよ。」


花の言葉に、先ほど言われた言葉を思い出した。


「あ…だからあんなこと…」

「ん?」


脱衣場に入ると、タオルや衣類を渡され、使用方法の説明を受けて理解したことを伝える名前。

脱ぐ彼女の隣で花は「で?あんなことって?」と問いかけた。


「天童のこと、もっと知りたいって思ったって、本人に言ったの。そしたら、名前ちゃんにどこまで惚れたらいいの?俺、って、言われて…どうしてそうなったのかって考えてたんだけど、花の話聞いたら辻褄が合った。」


「けど…」と頬を染めて制服を脱いでいく名前に、花は「ん?」と首を傾げた。


「あまり好きになっちゃうと…ダメな気がする。」

「は?なんで?」

「…どうしても、独占欲が出てくる。」

「…名前。」


花は目の前の彼女を見て思う。

相当天童に惚れてる。
でも、これ以上好きになると独り占めしたくなる。
しかし、まだ立場上そんなこと出来ない状況下にある。

それが、嫌なのかな…。と。


お風呂から出ると花に連れられ、女子寮の食事スペースへ。
花もまだ食べておらず、一緒に食べた。

その後、彼女の部屋に行く事になった。
天童には「全部終わったらすぐ帰って来て!」っと言われていたのに、花は「ちょっとイタズラしたくなった。」と不敵な笑みを浮かべた。

花の部屋は4階にあった。
すれ違う女のコはみんな背が高い。
高校に入ってから、女子バレー部を見ていないため初めての人ばかりだった。


「名前は、私と同じクラスになる前にバレーやめてさ…どうしてバレー部の私と仲良くしてくれたの?」

「え、それにバレーは関係ないよ。天童も同じだけど…他人がすることに私は何とも思わない。ただ、見ると…羨ましいなって思うけど…もう私にはバレーは無くなって消えてるから…」


「最近はもう大丈夫だよ。」と話す名前の顔を見て、花はホッとした。


「もしかして、ずっと辛かったんじゃないかな…と思って。丸1年一緒に居て…天童も私もバレーと関わりを持ってて、名前は嫌な気持ちのまま私と一緒に居てくれてたのかな、て。」


そんなことを、考えさせてしまっていた。
名前は、「ごめんね。」と謝った。
花は慌てて「いや、考えすぎかな?とは思ったんだけど…耐えることって人間出来る人がいて…名前は、出来るというより、しちゃう人だよな、と思ったから…」と苦笑いを向ける。


名前は花に「ふふ…さすが、よく分かってるね。」と言うと彼女に視線を向けた。


「普通に元気で優しくて、よく理解もしてくれていい人だな、と思ってたよ?バレー部って、やってる人は重いモノみたいになってるんだろうけど…してない方から見ると、普通にクラスメイト、とか、友達として見るしかなくて…」


「だから、なんていうのかな…」と視線を落とすと、「あ、」と思いついたように顔を上げた。


「花は、私の憧れる存在。」

「え、憧れる存在?私が?」


「うん。」と微笑む名前。


「だから、花と居ると前を向くしかなかったよ。時間が経てば経つほど、花がバレー部だってことは気にしてなかったし…ちゃんと、友達だと思ってるから、つらいことなんて一つもなかった。むしろ、居てくれてありがとう。」


名前の言葉に花は目頭を熱くした。


「っ〜名前ー!」

「え…どうしたのっ」


ガバッと彼女に抱きつく花に、名前は背に手を回した。

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