関りは避けられず
陥れる
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しかし、天童はすぐ唇を離すと目をパチっとさせて「あ、そうだ。ダメだ。」と呟く。
名前は首を傾げる。
「名前ちゃんさ、花ちゃんとこでお風呂入ってきなよ。俺も入るから。」
「ん?うん?」
花に「10分後」と言われたのを思い出した天童はげんなりした。
少し落ち込んだ様子を見せたがすぐパッと表情を明るくさせて「2人っきりだからまぁいっかぁ」と言うと立ち上がる。
「…。」
黙り込み、何も言わない名前を見た天童はフッと口角を上げた。
「もしかして…もっとしたかった?」
「!」
視線を上げ、天童を見た名前は頬をほんのり赤くして首を横に振った。
ホント、可愛すぎだよねぇ?
計算してしてるようには見えないし…これが素だったらヤバイ。
天童は目を瞑り眉間に皺を寄せ天を仰ぐと「襲いたい…」と呟いた。
「ねぇ、天童。」
「ん?」
名前はそんなことより、と棚を指さした。
「漫画読むんだね。」
「あぁー読むよ。ちゃーんと毎週買ってるんだよん〜」
「俺の毎週のお楽しみ。」とニコニコする。
「へぇ〜」と興味津々にニコニコ天童を見つめる名前に首を傾げる。
「読みたいの、カナ?」
「え?あ、違う…くて。違くないけど、違う。ん?」
「ん??」
名前は、読みたくないと言えばそんなことはないし、むしろ天童が読むものなら読んでみたいとさえ思った。
しかし、名前が天童を見ていた理由は、読みたいという催促ではなく…
「天童のこと、全然知らないから…ここに来て、天童のこと少しずつだけど知れてるなぁと思って、嬉しくて…」
名前は、素直に思ったことを口にし、頬を緩める。
きゅん、とした天童。
「…名前ちゃんは俺をどこまで陥れる気カナ?」
「陥れる?」
「名前ちゃんに、どこまで惚れたらいいの、俺。」
その言葉に、首を傾げる名前。
天童は、「たまに鈍感ダヨネ。」と言うと「お風呂行くよ。一緒に降りよっか。」とドアを開けて手招きした。
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