shootingStar[完結] | ナノ
関りは避けられず
疑問

▼ ▲ ▼


「で?どうして階段にいたのカナ?」

「あ…あれは…だから…」

「だから?」

「体育館に行って、天童を見ようと思って…」

「素直ダネ。俺なら言わないや。」

「えぇ…」


荷物を持ち、本気らしい天童は名前を連れて寮へ向かっていた。
道中、天童は多くの疑問を名前にぶつけていた。


「なんで、あんなこと言ったの?嘘でも言っちゃダメでしょ〜しかも元カレじゃねぇかっ」

「…あ、あれは、天童のことを思って…」


天童は振り返り眉間に皺を寄せた顔を名前に向けた。


「思ってない!ぜんっぜん思ってない!俺のことを思うなら“覚は私のモノなんだから!”くらい言ってくれてもいいんじゃない?」

「…本気でいいと思ってるの?」

「思ってる!じゃないと俺言わないし!」


ぷんすかしている天童を前にして、なぜか頬が自然と緩んだ名前は口元を手で隠した。


「しかし、奏生くんと喋ってるなんて…俺どうしようかと思った。」

「え?なんで?」


天童は階段を上がって行った時の自分を振り返り苦い顔をする。
名前は首を傾げた。


「だって、名前ちゃんが好きだった人ダヨ?俺まだ名前ちゃんの心全部占領しきれてないから自信ないんだよね〜。」とぼやく。


その言葉には、さすがの名前も目を丸くした。


「嘘でしょ。天童。」

「ホントだよ〜?やばいくらい不安だったね、あの瞬間。」


「だから早く奏生くんとの会話終わらせようと思ったヨ。」と普段の抑揚のある声ではないトーンで言う天童に、どこかホッとした名前。


いつも“自意識過剰な天童覚”と花に言われている彼だが、表向きはそうなようだ。

たぶん、こっちが本当の彼なのかもしれない。と少し名前は思った。


「でも名前ちゃんが大好きな俺は変えられないから俺の勝ち!」


この彼の一言が無ければ、見直していたに違いなかった。


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