関りは避けられず
わざとらしい
▼ ▲ ▼
「だーれと喋ってんのかと思ったら、奏生くんじゃん。」
「どーも。名前がお世話になってます。」
「ヤッホー」と手を振る天童に対し、相楽はニコニコと笑みを向けた。
二人の様子を見た名前は「え?知り合い?」と疑問を持ったが、天童によってその疑問は後回しにされてしまう。
「ちなみに、名前ちゃんがさっき言ったこと、ぜーんぶ嘘だから。」
「え?」
階段から身を出した天童は、すでに制服に着替えており名前のいる教室に向かうところだった様子。
「俺、名前ちゃんのことちゃんと本気だからネ?」
いつものお調子者の天童に見えるが、言葉は本気だとどことなく感じ取ることができる。
「あと、俺、名前ちゃんが彼女でもいいよ?むしろ大歓迎。」
「だから噂はそのままでいいんだよん。」と言うと不敵な笑みを向けた。
「ねぇ、奏生くん。名前ちゃん連れて行っていーい?」
「あぁ…俺も早く戻んねぇと。じゃあまたな、名前。」
「あ、うん。」
パタパタと階段を駆け上っていった相楽の背を見つめていると天童が背後から「はやく荷物とりにいくよ〜」と言って横を追い抜いて行った。
「て、天童…あの…」
「なんで教室じゃなくて階段にいたのカナ?」
「え…」
ぐるんと顔を後ろへ向けた天童、ぎくりとした名前は視線を逸らした。
「それは…気分転換だったり?」
「名前ちゃん嘘ヘタだねぇ。さっきといい…今といい?」
ふっと笑われ、教室へ入っていった天童。
その背に続くように教室に入った。
「正直に言ってごらん。」
「…一人でいると、どうしても考えて…」
「俺のこと?」
「違うことはないけど…隠してたこと。」
「あぁ!そうじゃん。その話聞かないといけないじゃんネ。」
「え?」
思い出したように天童が言ったことで、名前は驚いた。
少なくともずっと彼はその話を早く聞きたくて急かして教室へ来たのだと思っていた名前だったがどうやら目の前の人は違ったようだ。
「ん?」
「いや…その話、私しなかったから、天童…嫌な思いしたと思ってて…」
「ん〜あの場では、俺だけみたいだったし?知らなかったの。でも大体聞いたよ〜さっき。若利くんにネ。」
「それで早く名前ちゃんに会いたくなって、めっちゃ早く着替えたんだよ?!俺!」と長い腕を左右に広げた。
「若利くんがさ、あんなに名前ちゃんのこと褒めるんだから…相当いい選手だったんだろうなぁって、羨ましくなっちゃってさ…早く連れて帰ろうと思って!」
「…え?どこに?」
首を傾げる名前。
「え?どこって…ハッ!まさか今から俺の部屋に行くって知らなかったの?!」
「…。」
わざとらしいなぁ。と名前は目の前の彼をジトーっと見つめた。
天童は「女人禁制なんだけどねぇ〜秘密の密会だよねぇ〜燃えるよねぇ〜」と目を瞑って上機嫌だった。
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