関りは避けられず
ライバル視
▼ ▲ ▼
バレー部と花と名前のいる空間だけが、音のない世界になったようだった。
バレー部員たちは名前がバレーをしていた、とても上手い選手だったと牛島が言っていたのを知っているが、先に行ってしまっていた天童はそれを知らない。
そして、その場で知らないのは天童のみだった。
「天童は、知らないのか?」
「名前…」
牛島が目をぱちぱちさせる天童を見て問いかける。
花は固まる彼女に声をかけた。
「牛島くん。」
「…名前ちゃん?」
牛島を見上げる名前の姿を見る天童。
名前はそっと目の前の彼を見上げて「天童にはまだ話してないの。」と告げる。
目を見開く天童は「え、何なの?名前ちゃん、バレーしてたの?」と首を傾げる。
「あと、質問の答えだけど…バレーはもうしない。」
「…そうか。」
牛島はスッと視線を反らし、名前たちに背を向けると一言言った。
「もったいないな。お前のような腕を持つセッターがバレーをやめてしまうのは。」
それだけ言うと、食器を下げに向かった牛島。
残されたバレー部員たちが天童と名前を見て様子を伺っている。
「ヘェ。セッターしてたんだ?」
「…天童、あの…」
「なんで、隠してたの?」
「…それは…」
天童には、近々話そうと思っていた矢先に起こった現在、名前は突然のことでどう説明しようか困っていた。
花が何か言おうとしているが、彼女もどうフォローをすればいいのか迷っていた。
そんな不穏な空気を、一変させる者がいた。
「牛島さんがあれだけ言うセッターだったなんて…名前さん、侮れません。」
「「…。」」
1年の次期エース、五色だ。
彼は牛島をライバル視している。
そんな牛島にあれだけのことを言われた名前をもライバルと化したようだ。
周りのバレー部は目が点になっている。
しかし、天童は違った。
「ちょっと工!名前ちゃんのこと名前で呼ばないでくれるかなぁ〜?苗字さんって呼べ。」
「う…すみません!」
ふっと、花が笑う。
「ちっちゃい男。」
「花ちゃん。今のはちっちゃいとかの問題じゃないんだよ?上下関係の問題!」
そういうと、いくらか和らいだ場の空気に天童はハァと一つため息をつき、名前を見た。
「名前ちゃん。」
「は、い…」
じーっと、細めた目で見られ少し恐怖心が増した。
名前は俯いた。
「きょう、部活終わるまで教室で待っててくれる?」
その一言に、視線を上げた。
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