関りは避けられず
女人禁制
▼ ▲ ▼
“天童のこともっと知りたいと思って。”
ポーッとして、目の前の食事に手を付けようとしない天童。
それどころではないのは、間違いなく名前に言われた言葉だろう。
「天童、食堂ではダメだぞ。」
「ねぇ、獅音くん。」
「なんだ?」
瀬見に怒られて食事に手をつけないのかと思った大平だったが、違ったとすぐわかった。
目を瞑ってにやにやしている表情を見てしまえば誰もがわかるだろう。
「ウチ(寮)って女人禁制だよね。」
「うん。その言い方はやめような?」
優しい顔をして大平は天童にそう言う。
天童の言葉を耳にしていたらしい五色が「にょにん?」と首を傾げた。
「その言い方だと、食堂のおばさんはどうなるんですか。」と白布が箸を動かしながらぼやく。
それに天童が反応した。
白布を見た後、天を仰ぎ見る。
「そっかぁ。じゃあ女人じゃなくて…女子生徒禁制?」
「でも、用があれば入れますよね。」
白布は一体、天童の味方なのか?敵なのか?どちらでもなくただ正しいところへ導いているだけなのか…とバレー部員は考えていた。
天童は白布の言葉を聞いてパッと表情を明るくした。
「じゃあ、入れてもバレない?」
「いや、バレるでしょ。」
「すでにバラしてるじゃんかよ。」
セッター二人に言われた天童はうーん、と眉間にシワを寄せて考える。
「ウチ(白鳥沢)ってさ、恋には非協力的ダヨネ。」
「いや、恐らく天童みたいなヤツがいるからダメなんだと思うぞ。」
「エェッなんでっ」
「毎日盛ってそうじゃん。」
「それセミセミの完全な想像の俺だよね?」
呆れている天童の隣に食事を置いた名前。
「ん?」と置かれた食事を見るなり、そのまま視線を上へ上げた。
名前は「隣、ダメ?」と首を傾げた。
天童はじーっと彼女を見て「名前ちゃんさ、さっき俺言った言葉覚えてるっしょ?」と問いかけた。
名前はイスを引き、「あー…本当に言ってるの?」と質問で返す。
その様子を黙って見ていた花が「名前を部屋へ誘うなんて早いんじゃないの?天童覚。」と刺々しい言葉を投げる。
天童は斜め前に座っている花を見て「え、なんで知ってんの?」と目をパチパチさせた。
「あんたね、食堂で堂々とするにも程があるでしょ?」
「いーや!あれは俺は悪くない。可愛い名前ちゃんが悪い。」
「常に可愛い名前ちゃんでしょーが。」
「んー?だってさっきさ、俺を探してたんダヨ?ヤバイよね。」
バレー部はすでに花に天童を任せたといった感じだ。
黙々と箸を進める。
そこで、すくっと立ち上がったのはエース牛島だ。
「苗字。」
「っ…」
ごくんと食べていた物を勢い余って飲み込んだ名前。
パッと視線をあげる。
天童と花はもちろん、バレー部レギュラーの面々が視線を向けるは牛島だ。
「もう、バレーはしないのか?」
「…。」
その問いかけに、天童意外の面々は名前の返答に耳を傾ける。
しかし、わかってない天童は勿論口を開く。
「ナニ?どういうこと?」
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