関りは避けられず
興味
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お昼休み、珍しく食堂に来た名前と花。
ざわざわと盛り上がっている広い食堂を見渡す名前の視界にバレー部の姿はあっても天童の姿はない。
あれ…いつも一緒に食べてるんだと思ってたのに…。
花の後についていこうとした時、背後からガバリと抱きしめられた。
肩に回された腕を見た時、耳元で囁かれる。
「ダレ探してたの?名前ちゃん。」
「っ…」
ドキッとした。
声の主は正しく先ほど探していた彼の声で…そっと振り返ればにっこりした天童の顔があった。
「ねぇ、名前ちゃん、キスしてい?」
「なっ…ダメッ」
「この状況は“いいよ”って言うとこダヨ?」
天童が動くたび、赤い逆髪がふわっふわっと左右に揺れる。
何言ってるの…と口を開きかけたその時、天童が身を屈ませ「俺を探してたんでしょ?」と耳打ちする。
頬を赤く染め上げた名前を見た天童はにんまりとして「可愛いネェ。堪んない。」と言ってここが食堂だということを忘れているかのようにギュッと抱きしめる天童。
その光景を見ていたらしいバレー部の一人が「天童さん。生徒が見てます。やめてください。」と冷ややかな視線を向けて一瞥するとその場を去って行く。
セッターの人だ…。
白布の背を追っていた名前から天童は身を離すと「これだから賢二郎はモテないんだよ。」と言う。
「あの人って、セッターの人だよね?」と天童に振り返り聞けば、彼は「名前ちゃん賢二郎に興味あるの?」と問いかけた。
「興味というか…」
「ん?」
「何カナ〜?」と名前の言葉を待っている天童をちらっと見て考える。
こんなこと言ったら、絶対、天童調子に乗る…と思う。
なんて考えながら視線を落とすと手で彼を屈むように招く。
身を屈ませた天童に耳打ちをした。
「…。」
「…?天童?」
反応のない天童を不思議に思い、名前を呼ぶと再びガバリと抱きしめられた。
「ぐ…くるしい…」
「名前ちゃんさ、きょう俺の部屋来る?」
「…へ?」
「お前、ふざけんな。ここどこだと思ってんだ。」
「いだっ…」
瀬見に叩かれた天童。
どうやら白布に言われた瀬見が天童を迎えに来たようだ。
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