関りは避けられず
体育の授業
▼ ▲ ▼
「セミセミって…やばいんだけど。」
「花、笑いすぎ。」
苦笑いをする名前が体育館へ入ると、準備を始めていたクラスメイトたちを見て絶句した。
支柱が立てられ、数人の生徒がボールを持って元気に遊んでいる。
そこを先生が注意をした。
一気に、思い出したくない光景が彼女の脳裏を駆け巡る。
背後から「名前、ネット張ろう。」と声をかける花。
しかし、反応が全くない彼女を不思議に思って顔を覗き込む。
にゅっと視界いっぱいに花の顔が現れ、驚いた名前はハッと我に返った。
「あ、ごめん。眠くてボーっとしてた。」
「夜更かしかー、あ、天童と電話でもしてたの〜?」
「違う違う。そういえば、天童の連絡先知らないや…」
「…あんたら本当に好きあってるの?」
そんな会話をしながら準備室からネットを運んでいるクラスメイトに声をかけた花。
名前はぎゅっと胸元を握りしめた。
たかが体育、部活とは違う。
大丈夫、そこまで真剣にしなくてもできる。
そう自身に言い聞かせ、体育の授業が始まった。
「今日は基礎練習をしっかりして、来週からはチームを作って総当たり戦をするからね。勝敗で成績がついちゃうから頑張るよーに。」
これからボールに触ろうという前、体育の先生がそう告げる。
これは…やばいやつかもしれない。
名前は恐れていた。
チームを作るという言葉に。
成績がついてしまうということは、つまりこのクラスメイトの中にはバレー部の花やバレーの経験者が数人いる状況であり、力差があまりつかないように平等に振り分けられるに決まっている。
「じゃあこの中でバレー部は…霜月と笹川と山下だけかな?ほかに経験者いる?」
思わず、喉を鳴らした。
手に汗握る、こういう状況をいうんだと思う。
先生の視線がゆっくりこちらへ向けられる。
ぎゅっと目を瞑った。
「じゃあ3人はそれぞれチームのリーダーとして頑張ってもらうね。4チーム作ろうと思ってたんだけど…体育の成績で分けるから、こちらでなんとかしますね。」
「じゃあ各自2人1組になってサーブとレシーブの練習しようか。」と練習開始の合図。
名前はひとまず安心した。
「名前〜一緒にやろ!」
「うん。」
花に声をかけられ、ボールを手渡される。
「名前からサーブでいいよ。」と言われ、頷いた。
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