shootingStar[完結] | ナノ
関りは避けられず

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体操服に着替えながら、眠たい…と呟く名前を見て花が「私は今日やる気満々だよ!眠気なんてどっかいっちゃった!」ととても笑顔で言った。

名前はげんなりとした顔を花に向け、「なんでそんなにやる気あるの、きょう。」と問いかけると更衣室の扉を開けながら「だって、私が活躍できるじゃない!」と目を輝かせる。


「えー…きょう、なんだっけ?」

「きょうはね―…」

「あ!名前ちゃん!…がっっ体操服!!」


花の言葉を遮って、陽気な声が背後から聞こえた。
振り返れば、体操服を着た手足の長い天童がぎょっとした顔をして固まっていた。

名前は「おはよ、天童。」とまず挨拶をした。
今日はなぜか朝練が長引いていたらしく天童が朝教室にいなかったのだ。

今日はじめて彼の姿に「いつも通りだなぁ。」と眠たい頭で思った。
しかし、彼は彼女の足先から頭の先までジロジロ見て「うーん。」と難しい顔をする。


「こら、変態。見すぎ。」

「俺、ジャージ姿のほうが安心できるんだけど…」

「じゃあ、野放しにしてないで付き合えば?」

「!!そっか!…ってならねぇわ。」


「なんでそう意地悪なこというの?花ちゃんは。」と花にジロッと視線を向けた天童。
名前は、なんで付き合おうとしないんだろうとふと疑問に思う。


「じゃあなんで付き合わないの?好きなんでしょ?」


丁度、花も疑問に思ったらしく彼女が天童に問いかけた。
少しドキドキしながら返答を聞く。


「好きだけど…なんか、付き合ったらダメになっちゃいそうな気がするんだよネ。俺の勘が。」


名前は少しホッとした。
そういう理由か、と。


「…天童の勘、当たるからねぇ〜。」

「あー…ゲス・モンスターだっけ?」


花の恐ろしい者を見る目を見て、名前が思い出したように言う。
それを聞いた天童は「そういえば、名前ちゃんって俺たちの試合見に来たことないんだったっけ?」と問いかける。


「うん。いったことないねぇ〜」

「今度インハイ、見に来たらいいよ?」

「…え。」


名前は少し戸惑いを見せた。
それに花は首を傾げる。
普通なら、好きな人の勇姿を見たいと思うほうが当然で、喜んでもいい場面だ。


「名前ちゃんが来てくれたら俺めっちゃ頑張る!!」

「常にがんばれよ。」

「ゲッセミセミッ」


階段の踊り場で下の階から上がってきた瀬見と鉢合わせた天童。
瀬見がチラッと名前を見ると会釈をした。
ペコリとつられるように会釈をする名前。


「誰かと思えば女子バレー部の霜月じゃん。」

「瀬見って天童からセミセミって呼ばれてんの?」


笑いを堪えていた花が瀬見に問いかけた瞬間我慢できず吹き出す。


「天童…。」

「じゃ、名前ちゃんいこっか。」

「待て、おい。逃がさねぇぞ。」

「エ。」


名前とともに階段を降りようとした天童だったが、爆笑している花を目の前にお怒り顔の瀬見が捕まえた。

天童はきょとんとし、名前は苦笑いで手を振って見送った。

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