迷いのない自信
変哲もない
▼ ▲ ▼
次は移動教室。
昼休みのチャイムが鳴ると仲良く帰ってきた二人。
思わず笑ってしまった。
あんなに物凄い剣幕で出て行った花が、笑みを浮かべながら天童と話す姿は新鮮だった。
名前が笑っていることを、花がとても不思議がっていたが天童は「花ちゃんの必死な顔を思い出したんだよね〜。」とニヤニヤする。
「それは天童でしょーが。」と再び花が怒る。
それを見た名前は「本当、仲がいいねぇ。」と言う。
花は「仲良くない!!」と即答した。
準備を済まし、廊下で待っている花の元へ向かうと、その隣には天童の姿。
何やら真剣な面持ちで話している花を見る限り、恐らくバレーの話だろうと思った。
「それは花ちゃんがヘタだから。」
「っ…く〜でも天童に言われたら何も言えないっ!」
驚いた。
いつもなら、言い返すような言葉だったのに、言い返さないで悔しそうにしている花。
天童は、凄い。
それは少ししか見たことがない名前でもわかっている。
しかし、同じバレー部ということを考えれば、花も同じくらい上手いと名前は思っている。
実際、花の試合も見に行ったことがないのだが勝手な想像だった。
「名前。どうしたの?ボーっとして。」
目の前に、花の姿があった。
すぐ首を左右に振り「何もない。」と返事をする。
花の背後からニュッと現れた天童が「俺に見とれてたんダヨ?」と花に首を傾げる。
名前と花は呆れながら歩きだした天童の背を追うように移動教室へ向かう。
「名前ちゃんは俺に夢中だから。」
「そのあんたの迷いのない自信はどこから来てるの?」
「名前ちゃんが俺のこと好きってとこから〜」
「惚気るな!」
「あ!若利くんじゃん!」
目の前に現れたバレー部の二人に駆け寄っていった天童を据わる目で見ながら花が「ほんとアイツ名前大好きだね。」と言う。
名前は天童の姿を見ながら「ああいうところがいいよ。」と言った。
花は目を見開き、名前を見る。
「ああいうところって…あの変な自信持ってるとこ?!」
「うん。何の変哲もない自信だけど…貫けるんじゃないかって思わせてくれるよね。天童は。」
「はぁ?名前、あんた天童と関わり始めてからおかしくなったんじゃない?」
「失礼だなぁ〜花ちゃん。」
「ゲッいつから聞いてたのっ」
いつの間にか背後にいた天童に驚く花。
天童は据わった目で「天童と関わり始めてからおかしくなったんじゃないってとこから。」と花を見る。
「…あんたこわい。」
「エッ。」
階段ホールには、階段を上がる3人の足音とチャイムの音が鳴り響いた。
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