迷いのない自信
平和
▼ ▲ ▼
「天童覚。」
「なにかなー?花ちゃん。」
天童は語尾に音符がつくほど陽気にニコニコと返事をする。
花の眉間がピクリと動くのがわかった。
あ、やばい。と思った瞬間だった。
「名前と付き合うなんてぜっったい許さん!!」
「えぇっなんでっ」
「…はぁ…。」
屋上で押し倒されているところを花に目撃され、強制連行された名前。
そのまま1時間目が始まるまでどういう経緯があってああなったのかと質問攻めをされた。
それからというもの、お昼休みの現在までの数回ある休み時間、花は天童を名前に近づけまいと逃げ回っていた。
そして、現在。
ようやく話をしようと思ったのか花は天童を引っ張って連れてきたかと思えば、名前の親でも言うかわからない交際を容認できないと言った。
思わず出た溜め息。
天童と花はいつものごとく言い合いを開始。
「あんたと付き合ったら名前が今朝みたいなことになり兼ねない…いや、絶対なる。」
「え〜…でもさ、ヤキモチ焼くっていいことだと思うよ?」
「そりゃ、わからなくもないんだけど…」
「デショ?!」
「ん?」と目の前の会話に、名前は疑いの視線を向けた。
どこか、いつもと違う会話が聞こえる。
「それだけ好きだと思ってくれてるんだ…って思うもんね。」
「…もしかして、花ちゃん、妬かれた?」
「なっそんなことない!」と身を使って否定をする花の姿を見て笑みが零れた。
天童は「誰も花ちゃんなんて取らないのにね〜」とニコニコして言った。
その瞬間、いい気分だった花の気持ちが一変した。
「どーゆーことかな!?」
「エ。怒った?嘘だよ〜」
「本心でしょ!今のっバレバレよ!」
本当に彼らは高校3年生なのだろうか、と思うほど大人気がない。
身の危険を感じたのか、天童はいつものごとく花から逃げた。
教室を飛び出していった二人を見送り、静かになった瞬間名前はふっと頬を緩めた。
「平和…。」
グラウンドで体操服を着た男子生徒が数人サッカーボールを蹴って遊んでいる。
それを見て、名前はあることを思い出していた。
[ 26 / 70 ]
prev | list | next
しおりを挟む