shootingStar[完結] | ナノ
迷いのない自信
“バレー部の天童覚”

▼ ▲ ▼


「いや、名前ちゃんに妬いてもらおうなんて考えてないヨ?」

「考えてたら嫌いになる。」

「考えてないから!!全く!!いたこと知らなかったし!」


必死に否定する天童に、くすっと笑う名前。
その瞬間、ぴたりと動きを止めた天童。

不思議に思い、視線を向けた瞬間、ぎゅっと大きな体に包み込まれた。

ギュウっと抱きしめられ、「へっ…」と驚きのあまり、変な声が出た名前。
天童は抑えられない気持ちを彼女を抱きしめることで必死に抑えていた。


「名前ちゃんって結構俺のこと好きなんだね。」

「そんなことない。」

「今更隠すの?遅いんだよ〜。」


抱きしめていた右腕だけを解いて、左腕は相変わらず名前の背から肩にかけて回されている。

自由の利く天童の右腕は名前から少し体を離すと、彼女の頬に添えた。
抱きしめられた瞬間から、胸はドキドキしているし、体温は上がり頬は熱を帯びる。


「…デ?妬いちゃったの?モテモテの覚くんを見た名前ちゃんは。」


天童はすっかり大人しい腕の中の可愛い彼女に意地悪な問いかけをしてみた。
彼女の口から聞きたかったのだ。


名前は俯きながら意地悪をされているとわかりながらも、素直に「妬いた。」と言って顔を隠すように目の前の彼の身に腕を回して顔を隠した。


真っ青な空を見上げて天童は「俺もう死んでもいいかもネ。」なんて馬鹿なことを言う。


「あー…でもまだまだ可愛い名前ちゃん見てたいから死ねないや。」


そう呟く天童を抱きしめる力を強くした名前は、彼の胸で「ごめんね。不安にさせて。」と言う。

天童は「マジで焦った!!」と大げさに言ってのけたが、ふっと笑う。


「名前ちゃんは“バレー部の天童覚”を好きになったんじゃないでしょ?」

「うん…バレーしてる天童、見たことなかったから、この前見に行った。」

「あ!!アレそういう理由だったの?!」

「?そうだよ。」


天童から少し身を離し、見上げる名前。

あまりの至近距離で、少し収まっていた顔の赤さが再び戻る。
にやっと不敵に笑みを浮かべた天童が、その顎を掴むとそのまま唇とそっと重ねた。


「バレーしてる俺は一段とかっこよかったデショ?」

「…うん。でも…」

「ん?」


目をぱちぱちさせる天童の唇に触れる名前。
愛おしそうに見るその瞳に、天童はドキッとした。


「本当に、同じ“天童覚”なのかな。って不安になった。」

「ぶふっ…」

「なっ…何もおかしいこと言ってない!!」

「ごめっ…だって、変なこと言ったじゃん〜俺は一人だよ?バレーしてたって名前ちゃんを好きな俺は一人なんだから…そんな深刻な顔して、笑うしかないじゃん。」


世界滅亡みたいな顔してんの!名前ちゃん!とケラケラ笑うお調子者天童が現れた。

目の前で笑う彼を見てると、ばからしくなってくる。


「あーぁ。誰かのせいで甘いムードがなくなっちゃった。」


あからさまに目を据わらせて名前を見る天童。
名前は視線を少し逸らし、再び天童に向けると「じゃあ目つぶって。」と言う。


天童は「え。」と目を見開いた。


「名前ちゃんからしてくれんの?!」

「しーっ声が大きい!」


「ん〜」と少し考える素振りを見せる天童。


「でも名前ちゃん、一瞬しかしてくれなさそうだから俺からする。」


そう言うと、彼女の腕を引っ張り腰に腕を回す。


「名前ちゃん。」

「ん?」

「俺のことスキ?」

「…。」


無言を貫く彼女の姿を見て、天童は「ま、いっか〜」と言うと唇を奪うように重ねた。


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