迷いのない自信
いつもと違う
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いつもと、違う風景。
いつもと、違う空気。
いつもと、違う気持ち。
中学から通ってる、同じ通学路も同じ光景も…
今日は、違った。
朝から髪をいつも以上に気にしたり、制服を確認したり、鞄の中を確認したりした。
今は、白鳥沢に入れてくれた母にさえ感謝している。
だって、白鳥沢に入ってなかったら…
彼には出会えなかった。
もう飽きた通学路でさえ、歩くのが楽しみになる。
この道を歩けば、学校について…好きな人に会える。
初めてできた彼氏のような存在になっているけれど、初めてできた彼氏のときよりも…ドキドキしていた。
のも束の間…
「牛島くんだっ」
「ホントだ!バレー部朝練終わったんだね。」
「今日ちょっと遅かったんだねぇ〜登校時間のピークに見るなんて珍しい。いいことあるかも!」
学校につき、靴を履き替えようとロッカーに手をかけた時、女子の黄色い声が聞こえた。
何事かと視線を向ければ女子がいつもより多くいて、登校してきたばかりの生徒が足を止めていた。
理由は、体育館に通じる校舎の玄関を男子バレー部の面々が通り過ぎるところだったから。
キャーキャーと言われる中には、もちろん彼もいるわけで…
「天童くんだ!」
「天童〜!」
その名を聞けば嫌でも視線はそちらを向いてしまう。
名前の目に映ったのは、紛れもなくいつものお調子者な彼の姿。
クラスメイトの時、よく見た光景がそこにはあった。
「オハヨ〜元気だねぇ〜」
手をひらひらと振り、目を細める。
名前は登校中の自分を思い出し、「ばかみたいだ。」と思った。
乱暴にロッカーを開け、上履きに履き替えると彼たちとは逆の階段で教室へ向かった。
上に行けば絶妙なタイミングで天童と鉢合わせた名前。
天童は彼女を見るとダルそうにしていた目をパッと開き、「名前ちゃん!」と手をぶんぶん大きく振る。
その姿を見て、つい頬は赤くなるし、口元は緩むばかりで…
せめて視線だけでもとフイッと彼とは逆に向けた。
「?」
様子がおかしい名前に、もちろん気づいた天童は首を大きく傾げる。
「天童は苗字さんと付き合ったのか?」
「…今の見て、そう思ったの?」
「思わなかった。」
「ダヨネ?!」
「うぉ…なに?」
隣で天童を見ていた瀬見が問いかけたが、天童は少々不安げな瞳の色を見せていた。
瀬見は「へぇ、珍しい。」とそんな天童をまじまじと見ていた。
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