気持ちの傾向は強く
我慢
▼ ▲ ▼
教室に共に行く道中、天童が「きのう部活見に来てたってホント?」と問いかけた。
名前は「えっなんで知ってるの?」とつい口を滑らせた。
「いやあ、俺は見なかったんだよねぇ。」
天童は名前の言葉を聞いて上機嫌に上機嫌を重ねた。
ニコニコしてご機嫌な様子が見て取れる。
「でも、工が見たらしい。」
「…工?」
「1年の黒髪艶サラの。」
その印象的な髪を言われれば、すぐどの部員のことを指しているのかわかった。
「あ、叫ばれた人…」
「え?工に?」
「うん。門のところで…」
あれはびっくりした。と話す名前を見て、そっと口角を上げる天童。
「?なに笑ってるの?」
「ううん。名前ちゃんが面白くて笑ってるんじゃなくて…口が緩むんだよネ。なんで?」
首を傾げて聞いてくる天童を見上げていたが、視線を落として「知らないよ。」と返す。
「俺幸せすぎて今どうしたらいいのかわからないんだよネェ〜だから名前ちゃん教えて!」
「!!」
そういって天童は腰を低くして彼女の顔を覗き込む。
名前はすでに天童の言葉に翻弄されて顔が赤かった。
「ねぇ、キスしてイイ?」
「ダメ!教室の前!見てわかるでしょ?」
「えぇ〜じゃあせめてギュッてさせてっ」
「それも同様にダメ。」
「だって学校始まっちゃったら何もできないデショ?さっきのキスだけじゃまだまだ俺の名前ちゃん不足は解消されないヨ?」
「…。」
「?」
教室の前で立ち止まった名前を不思議そうに見る天童。
「名前ちゃん?」
「わ…」
「わ?」
顔を俯かせて名前はぎゅっと手を握りしめた。
「私も…天童にもっと触れたいけど…我慢するから、我慢して?」
「…え…え?」
ちらっと天童に視線を向けて、真っ赤な顔で柔らかく笑う名前を見た天童はドキッとした。
そそくさと教室に入った名前。
天童は顔を両手で覆い言葉にならない感情を抑えていた。
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