shootingStar[完結] | ナノ
気持ちの傾向は強く
登校時間

▼ ▲ ▼


「…え?なんて?」


顔を上げると、ん?と首を傾げる天童の姿。
その顔は、本当に聞こえていなかったようで口を紡ぐ名前に、天童が握られていた手を自ら絡むように握りなおした。

それにドキッとした名前が天童の制服のネクタイの先を見ながら、「聞こえてたでしょ…」と言うと、彼は楽しそうに笑ったが、それはほんの一瞬だ。


「名前ちゃん。」と名前を呼ばれれば、顔を上げざるを得なくて…


20cm以上背の高い天童を見上げれば、お調子者の天童じゃない天童がいた。


まただ。
また、あの時と同じ感覚に陥る。


なぜか、天童で頭がいっぱいになって…ドキドキして。


「俺、すごい好きだよ。名前ちゃんのこと…マジで好きだからネ?」

「…。」

「…何か言いたげな目、してるけど…気のせいかな〜?」

「っ…意地悪。」


いつものふざけた感じも好きだけど、真剣な顔で言う天童は、また新鮮で好きだった。

笑う天童のネクタイを掴むと二度軽く引っ張る。

「んー?何かなー?」といつもの調子でロッカーに腕を付くと少し屈んだ彼の首に両腕を回す。

そのまま唇を重ねた。

少し離し、「天童が好き。」と言えば彼の腕が腰に回りそのまま唇を奪われた。


「っ…んっ…」


ヌルと舌が入ってきた瞬間、慌てて天童の胸を押した名前。
腰はホールドされ、それ以上は距離が取れない。

目の前の彼の顔はケロッとしていて、「嫌だった?」と首を傾げる。


「そうじゃなくて…人来るから…っ…」


チュッと重ねるだけのキスを一つ落とすと、ぺろっと唇を舐めた天童がヘラッと笑う。


「顔真っ赤ダヨ?名前ちゃん。」

「誰のせいだと…!」

「エ?誰のせい?」


生徒が登校してきた。
これから一番多い時刻を迎える。

天童はヘラヘラといつもの調子を取り戻していた。


[ 17 / 70 ]
prev | list | next

しおりを挟む