向き合うしかない
脈アリ
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天童が隣で走る白布に「なんであそこに名前ちゃんいたの?」と問いかける。
白布は「走り出そうとしたら五色が声を上げたので驚いた反動で見たら、名前さんとやらがいました。」と話す。
「ふーん?」と聞いておきながらあまり興味がないように返す天童に怪訝な顔を向けた。
「聞いておいてそれだけですか?」
「うん。ってか…賢二郎、二度とあんなお願いしちゃダメだからね〜」
「…あんなって…付き合ってくれたら常に絶好調でいられるって言ったの誰ですか?」
「それは確かに言ったけどさー?」
少し呆れたような顔を向ける天童に、白布は前を向いたまま「まさか、怖いとか?」と言う。
天童はギョッとした。
「まさかぁ〜!そんなことあるわけないデショ?ゲス・モンスターと呼ばれる天童覚くんダヨ?」
「…天童さんって、わかりやすいですね。悟られにくくはしないんですね。」
「…悟られにくく、ネェ…」
白布の言葉に、何とも言えない表情をする天童。
「全くわからない人じゃ、つまんないからね?ちょっとはわからせてあげないと…女の子はスリルを求めるんダヨ。」
「…そんなこと言ってる間に、誰かに取られても知りませんから。」
「え?誰?」
「それはわかりませんけど…前うちのクラスで名前さんとやらの噂してるの聞いた覚えがありますよ。」
「…それ嘘でしょ。賢二郎。」
「…工がさっき言ってましたよ。名前さん、練習見に来てたって。」
それを聞いた瞬間、天童は大きな目を更に大きく見開いた。
「エ?!何でそれ先言わないの!その前の話必要?いらなかったよね?ね?」
「言ったら部活抜けて追いかけて行きそうだったんで。」
「またまた賢二郎は〜…実は賢二郎、俺のこと好きだったり…」
「しません。」
「…。」
静かになった天童が考えることは、二つ。
五色の言葉が本当なら、どうして見に来ていたんだろうということと…
誰を見に来ていたのか、ということが疑問となる…
…名前ちゃんに変なとこ見せてないよね、俺。
あと、見られていた場面でのことだった。
「…脈アリかな?」
そう呟いた天童に、白布は「可能性はかなりあるかと…」と答えた。
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