向き合うしかない
バレー部での姿
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1日の授業が終わった。
天童は名前を見ることもせずすぐさま部活へ向かって行った。
その姿を見て胸がもやもやする名前。
…結局、朝から全く話しかけられることがなかったな…。
一人、考えて、バカみたい。
話しかければ、よかったのかな。
いや、話しかけたって今朝と同じようにはぐらかされるだけだ。と首を振る名前。
その姿を見たらしい花が「名前、大丈夫?」と心配している声色で問いかけた。
名前は苦笑いして「大丈夫!」とだけ答えた。
花はあまり深入りしようとはせず、「じゃあ部活行ってくるね。何かあったら連絡すること!」とだけ言って教室を出て行った。
何かあったら、とは、恐らく、一人で悩みすぎるなということだろうな。と考える名前は鞄を肩から掛けると教室を出ようとした。
「あ、苗字。帰るか?」
「え?」
黒板を掃除していた先生に声をかけられ、振り返ると、満面の笑みを浮かべた先生がいた。
「…今日当番じゃないのに。」
教室のゴミ袋を持って階段を下りる名前。
「帰るついでにコレ(ゴミ)出してきてほしいんだ。」と有無言わさず手渡されたゴミ袋を受け取ると、しぶしぶ教室を出た。
ゴミ捨て場は体育館を通り過ぎた先にある。
下足ロッカーでローファーに履き替えると、まっすぐゴミ捨て場へ向かった。
部活は始まっているようで、号令や掛け声が聞こえてくる。
体育館か…バレー部練習してるかな。
昨日からただ一人のことばかり考えている名前はすっかりその気になって体育館のそばを通る際、ゆっくり歩き中の様子を伺った。
…あ、牛島くんだ。相変わらず無表情だなぁ…。
目的の人が見当たらず、すっかり立ち止まって覗き見る名前。
その視界に、声と共に入ってきた。
「アレ?!若利くん背伸びた?!」
「…いや?伸びてはいない。」
…いた。
声を聞いただけで、胸の拍動数が増す。
よくよく考えてみれば、バレー部だということは知っていたが、彼のバレーをする姿は全く見たことがないな、と思う名前。
ゴミを掴みながらバレない程度に顔を開け放たれたドアから覗かせる名前に、体育館にいた一人が気づいていた。
1年の五色だ。
「…。」
あれって、天童さんの…想い人!!!
えっと…名前さん。
天童を見る五色だが、彼は全く気付いてないようでバレー部エースと親しげに話している。
言うべきなのだろうか、でも、彼女は明らかにバレないように身を隠している…見えてますけど…。
これは、言わないほうがいいんですかね。
なんて一人葛藤している五色に気づいたらしい天童がニヤリと笑う。
「工〜そんなキンチョーしなくても鍛治くんは来るヨ?」
「いやっ…あのっそうじゃなくてっ!」
大きい目をパチパチさせた天童がヘラッと笑った。
「仕方ないなぁ〜俺がブロック跳んであげるからボール持ってきなよ。」
「…はい。」
るんるんとネットの向こうへ歩みを進めた天童の背を見て五色はしぶしぶ立ち上がるとネットの前まで歩いていく。
その様子を見ていた名前が「やばい。」と身を隠した。
天童の視界に入ってしまう扉に身を隠す名前。
「セミセミ、トスあげて。」
「セミセミ言うな。」
瀬見にトスを上げるように要求した天童の声に、ホッとする名前。
どうやらバレていないようだ。
しかし、せっかく練習している様子を見ることができると思ったが、このままでは見れずに終わってしまう。
どうにかして…見たい。
そう思った名前は足元にある小さい窓が開いていることに気づいた。
ここならあまりわからないかも。
そう思った名前はスカートながら座り込むとそっと中を覗いた。
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