向き合うしかない
視線 天童覚side
▼ ▲ ▼
自分でもわかる。
いつにも増して、テンションが高いことが。
授業中、視線は感じてた。
でも、ちょっと意地悪してみた。
いつにも増して、大人しくしていようと思っていたけれど…
それじゃ、彼女を振り向かせるには足らない。と感じた。
だから、いつもみたいに元気な俺で午前を強行突破した。
話したのは朝のあれっきり。
他の休み時間は普段通り、名前ちゃんが気にしていようと、してなかろうと…俺は、いつも通りでいるだけだ。
そうすることで、たぶんだけど…彼女は、俺のことを意識してくれるって、思ってるよ?
お昼休みも、彼女に声はかけないで学食に向かった。
「天童くんだ!」
「ヤッホー。」
いつもの如く、女の子たちに声をかけられる俺。
こんな姿を見たら、名前ちゃんはヤキモチ妬いてくれるのかなぁ?なんて考えてる俺は相当重症。
でも、妬いたら言ってあげるよ。
彼女たちは、俺のこと、“男子バレー部の一人”としか思ってないんだよ。って。
全国常連チームだけど、その試合を見てカッコいいって思ってくれるのも、悪くないんだけど…
俺は、ちゃんと中身を見て欲しいんだよネ。
俺、天童覚という一人の男として。
だから、俺は名前ちゃんに惹かれてる。
「天童、ブロックうまいんだよーって花が話してくれてたんだよ。」
2年のときに、初めて知った様子の名前ちゃんにちょっと驚いた。
俺は、今まで女子全員を“バレー部の天童覚”としてしか見てくれてないと思ってた。
自意識過剰だった、とその時思った。
名前ちゃんは、バレー部の応援にも来たことがなくて…俺のバレースタイルを何一つ知らなかった。
そう、それを知って…自意識過剰だと気付いたとともに…
なんで知らないの?って思った。可逆心だ。
俺のことを、知らない子がいた。
珍しい。
でも、それがムカついた。
俺の真っ黒な心が、出てきた瞬間だった。
俺を見て欲しい。って。
たぶん、名前ちゃんに彼氏がいて、ソイツにだけ一生懸命向けられる視線にムカついた。
振り向かせて、俺だけをって思ったきっかけ。
でも、今は違う。
俺が、彼女に釘付けなんだよね。
「天童は色恋沙汰か?」
「獅音くん。俺は今、直感が優れてる気がする。」
恋は、素晴らしい。
俺に、力を与えてくれる。
「気がするだけか。」
「英太くん。俺見て、ちょっと悔しいんデショ?」
「なんでだよ。」
「わけがわからねぇぞ。」とお箸を動かす英太くんにぎょろっと目を向けるととても引かれた。
「…恋って、すごいね。」
「天童は重症だな。」
獅音くんの柔らかい笑顔に、俺の心はさらに和んだ。
[ 11 / 70 ]
prev | list | next
しおりを挟む