向き合うしかない
ペース
▼ ▲ ▼
「ねぇねぇ名前ちゃん。俺昨日からずーっと名前ちゃんのこと考えてたんだけど名前ちゃんは?」
「え…」
「ねぇ、名前ちゃんは俺のことスキ?付き合う?付き合っちゃう?」
「えっと…待って。天童。」
教室についても天童は名前にべったり。
名前は天童に詰め寄られ苦笑いするほかない。
何も言わない名前に天童は不安になった。
「もしかして昨日のアレは俺一人で舞い上がっちゃった感じ?」
感情の読めない表情で大きな目を向けてくる天童から視線を逸らす名前。
その姿を見て、ニヤリと笑う。
「やーっぱり名前ちゃんも意識せずにはいられなかったんデショ。俺のこと。」
「っ…」
なんでわかったんだろう、と言う顔を向ける名前とは裏腹に、天童はケロッとした顔を向けていた。
「…好きでもない人と、キスできちゃうような人だとは思ってないよ?」
その言葉に、言葉を無くした。
ここで否定しなければ、肯定、つまり…天童を好きだと言うようなもの。
でも、もう遅いような気がした。
目の前の彼は、私の心を全て読んでるように思えて仕方がなかったからだ。
「俺もだけどね。」
「…なんで…」
「?」
何でこの人は、こうも簡単に、気持ちをハッキリ言うのだろうか?
そこがわからない。
こういう人なのか、それとも冗談でヘラヘラと言っているのか。
だから、信じれない。
天童に面と向かって聞こうとしたが、その口を閉じた名前に首を傾げた。
素直に言う子だと思ったが、実はそうではないのだろうか?と天童の思考が回る。
その時、朝練を終えた花がやってきた。
天童を見て慌てる。
「エッまさか名前、天童と付き合った、なんて言わないよね?」
「え?」
「花ちゃん。もうちょっと待ってて。今俺が交渉中だからネ!」
「え?」
花の言葉を聞いて、「私と天童がそんな感じだということをなぜ知ってるのだろう?」と思ったと同時に、天童の「交渉中。」という言葉に疑問しかない名前。
天童は慌てる彼女を見てニコニコしている。
「朝練のときに、花ちゃんに話したんだよ。」
「あ、そうなんだ…」
「それを聞いた私はかなりご立腹ですけどねぇー?」と腕を組んで、椅子に座る天童を見下す花。
バレー部だけあって背は高いため威圧感が大きい。
しかし、天童は「もしかして…花ちゃんも俺のこと好きとか?」といつもの調子を見せる。
そんな彼のペースに、振り回されるばかりだった。
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