向き合うしかない
飽きない男
▼ ▲ ▼
「お、天童帰ってきた。」
「?元気ないですね。静かでいいですけど。」
体育館で先に練習を始めていた部員たちがトボトボと帰ってきた天童の姿に目をやる。
大平が「どうかしたのか?」と優しい言葉をかけた。
視線をゆっくり上げた天童。
「獅音くん。俺と2年以上付き合ってきて…俺、おもしろくないなーって思ったことある?」
「ん?毎日楽しくていいと思うよ?」
「ダヨネ!じゃあ俺問題なし!」
「?」
遠くから二人の会話を聞いてた白布が「残念ですね。復活したみたいです。」と呟いた瞬間、ぎゅるんと大きな瞳が彼を捉えた。
「賢二郎、今何か言ったよネ?ネ?」
「いえ、別に。」
「ウソッ!」
「復活して残念です。」
「ソレ!ソレ思ったんでしょ?!」
「思いました。うるさいんで…」
「うるさいとか言う?先輩に言う?」
朝から騒がしい体育館。
いつもと何ら変わりない光景だった。
部活を終えた天童たちがぞろぞろと教室へ向かう。
廊下ですれ違う生徒たちからチラチラと視線を浴びるもなんらいつも通りだと彼らは全く気にしていない。
体育館から教室へ行く道中、目の前の生徒に素早く反応した天童。
「名前ちゃん。」
「…天童。」
階段に上っていた名前は振り返り天童の姿を見て柔らかく微笑んだ。
その顔を見た瀬見が「うお、めっちゃ可愛い子。」と呟く。
「あれが名前ちゃんですか…」と五色も呟いた。
「苗字か。」
「?!若利、知り合い?」
部員たちの一番後ろでボソッと呟いた牛島に瀬見が問いかける。
彼は一度、しっかり頷く。
「バレーが上手い。」
「へぇ…そうなの?」
「牛島さんが言うなんて…相当うまいんでしょうね。」
白布が言った言葉に牛島は再び頷いた。
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