向き合うしかない
難しい
▼ ▲ ▼
「あぁ〜…朝練キツイ。」
翌日。
天童は普段通りバレー部の朝練に出ていた。
ランニングから帰ってきたらしいバレー部員たちがだるそうに体育館へ向いて歩いている。
そんな彼らとすれ違う女子バレー部の面々。
「てんどーう!おはよー」
「!!」
だらーんと力を抜けきっていた首を上げて名前を呼ばれた方へ勢いよく顔を向けた。
手を振っているのは可愛い女子、クラスメイトの花だ。
名前と仲のいい花を見て先ほど帰ってきたばかりだと言うのに彼女に向って走っていった天童。
「あ!花ちゃーん!聞いて聞いて、あのさー!」
「あっ、おい天童!すぐ帰ってくるんだぞ!」
その背に向かって叫ぶ瀬見の声なんて彼には届いていない。
五色が「カワイイ…花さんかぁ。」なんて呟いていた。
「昨日さー名前ちゃんに言ったんだよね。」
「え?何を?」
彼女のペースに合わせて平衡に走る天童を少し見上げる花。
目をぱちぱちさせた天童は、にやりと笑った。
「好きだよ〜って。」
「…はぁあ?!」
花は驚きのあまり足を急に止めた。
そして、数歩前で同じく止まった天童を見て叫んだ。
早朝の白鳥沢に、驚きの声が響き渡ったのだった。
「あんたふざけるのも大概にしなさいよ!私の大切な友達までも手を出しに…」
「誤解だよ!花ちゃんは誤解してるから!」
「は…?あんたの噂を聞いて誰がソレを誤解じゃないと信じれると…?」
花の目には、色が見えなかった。
花ちゃん、コワい。と心の中で天童は思う。
「俺ね、ずっと前から名前ちゃんのこと好きだったんだよ?でもさ、一途に彼氏想ってたデショ?だから、自分の気持ちに気づかないフリしてた。」
けろっと言ってのけた天童の言葉に、花は眉間に皺を寄せる。
「じゃあ何であんたは一途に名前だけ想ってあげてこなかったのよ?ずーっと絶え間なく彼女いたじゃない。」
それを言われてしまえば、天童はこう答えるしかない。
「恋が、わからなかったんだよ。」
それを探すために、付き合ってたんだよ。
「…名前は、難しいと思うよ。」
「エ?」
花の、一言に天童は目をぎょっとさせる。
キッと鋭い視線を天童へ向けた花はフイッと視線を逸らすとハッキリとした口調で彼に伝えた。
「飽きない男じゃないと、落ちない。」
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