お調子者は相変わらず
たまたま
▼ ▲ ▼
「あー…名前ちゃんに会いたい。」
「?」
ロードワークを終えた部員一同はぞろぞろと体育館へ向かう。
その中に天童たちの姿ももちろんあった。
彼は身の力を抜きだるだると歩きながら隣の五色をチラッと見た。
五色は何とも言えない顔で首を傾げる。
「ねぇ工。」
「はい…?」
首を傾げ続ける五色を見ながら天童は「工はさ、好きな人が出来たら何したい?」と静かに問いかける。
五色は目を見開き、次の瞬間、顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせた。
「すすすす好きな人ですか?!」
「あー…ゴメン。何でもないや。」
天童の適当さに振り回される五色の身を案じながら、2人の様子を見ていた瀬見。
そしてその隣で大平が「工、気にするな。」と肩を叩いた。
「工にはちょ〜と刺激強すぎたカナ?」
「いや、お前聞く相手を考えてから聞け。」
「え〜だって英太くんモテないじゃん?」
「モテなくて悪かったな!!」
そんな会話をしながら歩いていく二人を目にした人物がいた。
「天童?」
声のした方に振り返る二人。
丁度今から帰宅する様子の、名前の姿。
パッと花を咲かせる天童の表情の隣では、目を少し開き驚いた様子の瀬見がいる。
「部活、だよね?」と問いかける彼女とは裏腹に天童は「名前ちゃんに会いたいな〜って言ってたんだよねぇ〜」と彼女に駆け寄る。
瀬見はため息をつく。
天童のこの行動は今に始まったことではない。
「慣れる俺って…」
まだ数人ロードワークから帰ってきていないことをいいことに、少し天童たちの様子を見守ることにした。
「丁度良かった。あの時、ゴメンね。って謝りたいなと思ってて…」
「あの時?」
首を傾げる天童に、名前は「好きかどうか聞いた時。」と恥ずかしそうに付け足す。
あぁ!と口を盾に開いた天童は「そう、そのことなんだけどさー?」と眉を顰めた天童を見て、傍から見ていた瀬見が「まさか…」と身構えた。
「名前ちゃんは俺が女の子とよく話するから不安になって聞いた?」
「…え…?」
キョトンとする名前と、天童の背後で頭を抱える瀬見。
天童は目を数回パチパチさせた後、「え?」と瀬見を振り返り見る。
瀬見は首を横に振った。
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