お調子者は相変わらず
原因
▼ ▲ ▼
ロードワークに出た瀬見と天童。
他の部員たちも各々着替えを終えると走りに行く。
「で、その聞かれた後はどうしたんだよ。」
「抱き締めてチューした。」
「はぁ?!」
天童と瀬見は先ほどの会話をしながら走る。
「ウソだけどね。」
「…。」
イラァとした顔をする瀬見にビクッとする天童。
「英太くん…ゴメン。」と素直に謝罪する。
「“好きだよ?”とは言ったけど…すごい不安気な顔してた。」
「…お前、本当に心当たりねぇの?」
「へ?」
目をパチパチさせる天童に難しい顔を向ける瀬見。
「例えば…彼女が不安になることとか。」
「英太くん。たぶんその“不安になること”の中身を例えにしなきゃいけないんじゃない?」
天童の問いかけに瀬見は眉間に皺を寄せる。
その“不安になること”がわからず大きく言うしかなかったのだ。
「…やっぱ英太くんじゃダメか。」
「失礼過ぎるだろ。」
「獅音!」
話しながらだと、やはりスピードは落ちるもので、後から走っていたらしい大平が二人に追いついた。
瀬見はとてつもなく落ち込んだ様子を見せる。
「瀬見はモテないのか?」と大平。
「俺はモテないなんて一言も言ってないヨ。」と天童が首を横に振る。
そんな天童を見た瀬見は呆れた顔で「この前部室で言ってたじゃねぇか、そんな感じのこと。」と言えば、「あ。“何で彼女できないんだろうね”って言ったね!」なんて恍けたように言う。
「…モテてるのかすらわからねぇ。」
「容姿はイケてるのにな。」
「顔だけデショ?」
「さっきから失礼だなお前…っ」
「だってそうじゃなかったら今でも彼女いて当然じゃん。」なんて天童が平然と言ってのける。
「違うだろ。女子が瀬見に近寄りがたいんだよ。」
「?」
「カッコよすぎるんだろう。」
大平の言葉に、黙り込む瀬見。
「あ〜イケメン過ぎるってやつね。」
瀬見は「嬉しいけど…素直に喜べない。」と再び難しい顔をした。
「そのせいで彼女いないんだろう。そういえば、天童は女子とよく話してるよなぁ。瀬見はそういうところあまりみないけど。」
「俺わかった!女の子は喋りやすい男のがいいんじゃないっ?」
「だから英太くんも女子と話してみれば?」とまた簡単にそんなことを口にする天童に向かって
「だからそういうところが彼女不安にさせるんだろうが。」
と瀬見が言えば、
「……。」
天童は瀬見を見て黙り込むと、口を盾に大きく開いた。
「ナルホド!!」
「え?何?」
瀬見は突然大声を出した天童を見てギョッとした。
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