好きな人は大切に
独占欲
▼ ▲ ▼
ん?とその腕を見た天童。
乱れた制服のまま少し身を起こす名前。
「ここ教室だし、誰か来るかも…」
「来ないよ。みんな帰ったか部活か……アァ!」
大きな声を出す天童にビクリとする名前。
な、何?と焦る天童を見て少し怖くなる。
我に返れば、時には残酷な現実を受け入れなけるばならなくなる。
「部活忘れてたぁ!!」
「え…」
「でも…」
チラッと名前を見た天童。
乱れた制服に、乱れた髪、ほんのり紅く染まった頬、濡れた唇…
「っ…んっ…」
「まさかバレーと名前ちゃんを天秤にかけるときがやってくるなんて…」
そう言いながら彼の手は名前の肌に触れる。
「…名前ちゃん…」
「なに…」
ぴたっと天童の手の動きが止まる。
目をぱちぱちさせて、名前を見た後彼は「何でもないや。」と言って胸に顔を埋めた。
「…部活行ったら?」
「んー。いくよ?そのウチ。」
「そのウチ…って。」
顔を上げた天童の指が名前の首筋に触れる。
「名前ちゃん、行ってほしくないでしょ?」
ツウっと指で鎖骨まで伝い落とせば、名前は顔を背けた。
そのおかげで露わになった首筋に、唇を寄せた天童。
「…朝仲良さそうに歩いてた人ダレ?」
「朝…?」
何も考えられない状況の中、朝のことを思い出す。
…誰かと話したっけ?
考える名前の首筋にキスをしたかと思えば、そこを強く吸う。
「い、痛い…」
「早く答えてくれなきゃ見えるとこにつけちゃうからねぇ〜」
次々に赤い印を落としていく天童の、肩を掴む。
「んっ…」
「可愛い、名前ちゃん。」
天童の言葉で思い出した名前。
《あー、やっぱり言われてるんじゃないですかー。顔赤いですよ。》
「サッカー部の、2年生の人。」
「なんでサッカー部、しかも年下と仲良いの?」
「…奏生の後輩で…久しぶりに会ったんだよ。」
ふーん、と詰まらなさそうに返事をすれば、彼は名前の首筋に吸い付いた。
そこに、驚きのあまり彼の身を押す。
「ちょっ…そこはダメ!見えるっ」
「ダメって言われてももう付けちゃったもんね〜」
「…なんで、」
「俺もさ、気づいたんだよ?なんで今日こんなにイライラしてるんだろうって…俺、独占欲強いみたい。」
けろっといつもの調子で言ってのける天童に、今度は名前が瞬きをする。
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