お調子者は相変わらず
甘い雰囲気
▼ ▲ ▼
「…エロい声?」
「っ…ちがう!そうじゃない!」
3年2組。
教室の窓際の隅でヒソヒソと話をする女子生徒2人。
至って普通の休み時間だが、居るだけで賑やかな天童の姿がそこにはない。
それをいいことに、2人は会話を繰り広げる。
名前の話はこうだ。
天童と甘い雰囲気になった時、彼の声色がいつもと違った。
それを花はこう言った。
エロい声?
名前はそういう事ではなくて、と難しい顔をする花に伝える。
「…すごいドキドキして…」
「甘い雰囲気だもんね?」
「もっと触れたくなって…」
「甘い雰囲気だもんね?」
「うぅ…」
甘い雰囲気の一点張りで終わってしまった名前の疑問。
花は名前の顔をジッと見つめる。
「で、その後どうなったの?」
「花はそっちが聞きたいのね…」
「そりゃ気になるじゃん!」
「…それが…」
天童からの視線は真っすぐ向けられていて、甘い雰囲気というだけあって胸の高鳴りは増す一方。
しかし、名前は天童にしてほしいことをこの時言えなかった。
ガラッと勢いよく開かれた、ドアによって。
「え、邪魔が入ったの?」
「邪魔というより…私たちがあんなとこであんなことしてなかったらよかった話で…」
「誰だったの?」
名前は一瞬言うのを躊躇う。
でも、結局天童が戻ってきてしまえばバレてしまうことだ。
「…鷲匠先生。」
「げっ…」
花は「あちゃー」という顔をした後「タイミング良すぎだ、監督。」と言う。
名前もさすがに苦笑いをすることで精いっぱい。
それもそのはず、天童の身に何かあればたまったものではない。
現在怒られているであろう天童の身を案じる名前。
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