君は誰のもの
恋敵
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翌日、白鳥沢の体育館には多くのギャラリーと東清の選手の姿。
もちろん、白鳥沢の面々もアップを始めていた。
名前はギャラリーの輪に入り込むようにして、選手からは見えないように身を隠して開始を待っていた。
試合開始直前、ギャラリーの視線が右隣へ向けられる。
東清のジャージを来た女子と、白鳥沢のジャージを来た女子がぞろぞろと席へ付く。
辺りを見渡す花だけが立ち上がり、多くいるギャラリーの中へ入り込む。
名前は東清の女子バレー部を見ていた。
もちろん、探している相手は聖だ。
「名前。」
ざわつくギャラリーの中で花が名前の隣に腰を落とす。
「聖は?」
「いるよ。」
そう。と東清のメンバーが座るそこに視線を向ける名前。
しかし、それを止めさせるようにコートでは試合が開始された。
コートでは試合前、東清の選手に声をかけられる天童がいた。
「天童。」
牛島と話をしていたところに、聳え立つ彼を見上げた天童。
「江波じゃん。なんか用?」
「なんか用じゃねぇよ…名前は来んのか?」
眉間に皺を寄せる天童は、そのまま立ち上がった。
「名前ちゃん、話したいことがあるって言ってたぜ。」
「…俺に?」
「ホントは連れて来たくなかったし、来ないでって言ったけど、言うこときかねぇの。」
「っ…」
ジロッと理久を見る天童の視線。
「聞きたいことがあんだよね。」
「…何。」
「…名前ちゃんとは、どういうカンケー?」
天童の探るような視線に、理久は口を固く閉じた。
コートに立つ双方。
思うことはそれぞれ違うが、想う人はただ一人。
「天童、顔が恐いぞ。」
「ダーイジョーブ!調子は悪くない!ハズ!」
本当か?と、げんなりする瀬見。
「恋敵がいるからな。」
「恋敵?」
大平の言葉に瀬見が振り返る。
指をさす大平、その先を見た瀬見。
天童の脳内には理久からの、たった一言が残っていた。
『俺と付き合う予定だった人。』
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