君は誰のもの
言った通り
▼ ▲ ▼
「うーん…うーん…」と唸る天童。
めんどくさいことにはできる限り首を突っ込みたくない瀬見は彼とわざと距離を取って前を通り過ぎていくが、「英太くん…」と声をかけられてしまえば、彼は無視できない。
「何…どうした?」
「名前ちゃんと江波知り合いだった。しかも江波は名前ちゃんのこと好きだって。」
「俺と大平が言った通りじゃねぇか。」
「だから明日来ないでって言ったのに…名前ちゃん、江波に話があるんだって。」
「?江波に?」
チラッと瀬見を見た天童が「あーそう。」と手を動かした。
「江波に妹がいるんだって。」
「妹?年下か?」
「いや。それが双子なんだって。俺が話したことあるって人はその子だったみたい。」
呆れる瀬見。
「もっとまとめて話せ。」
「だからー、江波(理久)が名前ちゃんのこと好きだから俺は試合見に来ないでって言ったんだけどさ?名前ちゃんが江波(聖)に話したいことがあるから見に行くって…あ、江波(理久)にも話したいことあるらしいんだけどネ。」
「ややこしいな。」
傍で話を聞いていたらしい大平がニコッとしてそう言った。
瀬見は眉間に皺を寄せて「全く頭に入ってこねぇわ。」とさらに呆れた表情を見せた。
「だって俺名前知らねぇもん。」
「コイツ…」
ヘラッと言った天童にため息をつくしかできない瀬見。
「苗字は結局来るってことか?」
「そうなんだよーそれが嫌なんだよねー。」
「珍しく弱気だな。」
「ねぇ東清のセッターってどんな奴だった?」
セッターの瀬見なら一番意識する人だろうと思った天童が軽い気持ちで聞く。
瀬見は「上手い。」としか答えない。
「前にも聞いたそれ。セッターとしてじゃなくてさー」
「喋った事ねぇもんな…」
「だよねー。」
目を瞑る天童に大平が「もう何言っても明日来ることは変わらないんだし、諦めた方がいいぞ。」と吐き捨てた。
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