君は誰のもの
遡る
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好きな人より、バレーが好きだったから男に興味がなかったこの頃の名前が、はじめて男だと意識したのは理久だった。
双子揃って白い肌と切れ長の目。
聖に見られる時も少し緊張していたが、理久に見られると無意識に視線を逸らしてしまう。
「理久ってモテるでしょ。」
「はぁ?名前に言われたくねぇ。」
「?何でよ。」
「絶対モテんのは名前だろ。」
「何言ってんの…?モテないよ。」
「嘘をつくな嘘を。」
「…。」
ムスッとする名前、しかし次第に笑みがこみ上げてくる。
笑う名前に「えー何笑ってんの…」と引き気味に理久が問いかけた。
「男の子とこんな風に初めてで…なんか楽しいなって。」
「えぇ。お前そんなこと言って何人と付き合ったことあんだよ…3か?」
「だから、付き合ったことないって言ってるじゃん。」
クスクス笑う名前の隣でこの時、理久は何を考えていたのかわからないが
「じゃあ、次の大会でうち(東清)が優勝したら俺と付き合って。」
「……。」
中学生の時に初めて異性から言われた衝撃的な告白だった。
東清は隣県にある学校だったため、白鳥沢と当たることはない。
県内では強豪だったため優勝の可能性は十分にあった。
しかし、その大会で名前はケガをした。
バレーと関わりたくない一心で部活も先がないとわかった瞬間にやめてバレーとは関係のなかった人として高等部へ上がった。
聖と理久のことは、バレーの一つとして思い出さないようにしていた名前。
でも彼らは違った。
奏生と付き合い始めてから数ヶ月経ったある日、二人でたまたま下校していた時に門で捕まった。
「名前!」
「……聖?」
彼女は高等部の制服を来て白鳥沢を訪れた。
驚いた。隣県からわざわざどれだけ時間をかけて私を探しに来たのだろうかと。
しかし聖は怒っていた。
「彼氏?」
奏生を見てそう問いかけられ一度頷けばその場で平手打ち。
漫画か何かか…平手打ちなんてはじめてされた。
尋常じゃない痛さだった。
「名前なんか大嫌い。」
何も聞かないまま彼女はそれだけ言って帰っていった。
絶対、聞きたいことがたくさんあってここまで来てくれたんでしょ?
後々考えれば、聖は理久の気持ちを知っていた。
そうすれば、あの平手打ちもわかった。
理久の気持ちの分と、バレーを勝手にやめて姿を消した…
全部勝手な私のせいだ。
「会って、ちゃんと話さなきゃいけない。理久にも、聖にも。」
「ちょ、ちょっと待って…名前はじゃあ兄の事…」
「好きだったよ。…でも、あの時はバレーとは関わりたくなかったから…」
2年になって、やっと落ち着いた。
花や天童に出会って、変わった。
「タイミングも悪かったね…」
「…。」
しぶしぶ花はそう言うが、自分のことで精一杯だったあの頃のことを思い出すと、胸が痛む。
いつもどこかで感じてる、引っかかっている感覚はあの頃だ。
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