君は誰のもの
嫌な奴
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放課後、部活にてロードワークを行う男子バレー部たち。
瀬見と大平が走っている隣を通り過ぎていく天童。
「おい、わざとだろ。」
「エッ?」
「あからさまだな。」
瀬見に呼び止められた天童が振り返れば、その表情は「おぉ!いたの?!」という顔をしていた。
大平が言えば天童は「ちょっと考え事しててさ〜」と言う。
「まーたお前はどうせ彼女のことだろ。」
「名前ちゃんのこと以外でも悩むよ〜?でも今回は英太くん、正解!」
いつも当てれる自信があるわ…と心の中で思う瀬見。
隣を走る大平が「また喧嘩でもしたのか?」と問いかければ天童は目を大きくした。
「喧嘩はしてないよ?次の練習試合に名前ちゃん連れてこなくちゃいけないんだけど…嫌なんだよね。俺。」
「連れてこなくちゃいけないってどういうこと?」
「見に来てくれた方が嬉しいだろう、覚は。」
「なのに、変だな。」と瀬見と顔を見合わせる大平。
瀬見もそれには頷く。
「江波がうるさくてさ〜」
「江波ってセッターのだろ。アイツ上手いよな。」
「英太くんダメ!褒めるなっアイツは嫌な奴なんだから!」
「…?」
瀬見の脳内はもはや意味が分からない状況に陥った。
大平が「もっと詳しく話せ。」と促す。
「この前の東清との練習試合の時に、俺名前ちゃんの話しちゃったじゃん?」
「あぁ。片付けの最中にな。」
名前のことを部活と同様、ぺらぺらと話していた天童。
それをどこかで聞いていたらしい東清の部員が天童に問いかけたらしい。
「“名前って苗字名前のこと?”って。」
「江波が苗字のこと知ってるってこと?」
「そう。それも驚きなんだけど…もっと驚きだったのがさ…」
遠い目をして思い出す天童。
江波に問いかけられた天童は「何で知ってんの〜?」と質問で返せば、天童の腕を掴んだ。
「名前と付き合ってんの?」
「物凄い怖い目で聞かれてさ。あれは怖かったわ〜。」
「お前が言うと全然想像ができないんだわ…ちゃんと話せちゃんと。」
「“そうだよ”ってその時答えたら、“じゃあ次の試合の時連れて来い”って。」
「…江波は、苗字のことを好きなのか?」
瀬見の予想に大平も「そう思えるけどな。」と頷く。
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