君は誰のもの
姉妹校
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うん、と頷いた名前を見て花は「じゃあ練習試合ははじめて誘われたの?」とさらに聞けば、それも頷く彼女にハァ…と盛大にため息をついた。
「なーんで今になって名前を誘う?」
「…?前にもあったの?」
花は椅子に深く腰をかけ、「二週間ほど前にね。」と答える花。
「思い出したくない試合だけど…」
「強かったの?」
「そう。うち(白鳥沢)と姉妹校らしいんだけど、一番練習試合する学校でね。そことは男子も一緒にしてるの…男子は勝つけどあたしたちはいつもダメで…」
「…。」
花の話を聞いて、少し心当たりがあった名前。
「…もしかして、東清(とうせい)学園?」
中等部でも一番試合をしていた姉妹校の学校だ。
高等部もあるなら、もしかしたら…と思った名前。
花は「知ってるの?東清。」と驚いた表情をした。
名前が中等部でバレーをしていた時、東清とはよく試合を重ねていた。
毎回、白鳥沢が勝利していたがある日、相手のセッターが変わった。
静かにしていれば、とてもクールに見える彼女。
しかしそれは一瞬にして打ち消される。
「あのっ名前教えてください!」
「…え?」
名前に目を輝かせ、人懐っこい笑みを向けた。
彼女は、“江波 聖”(えなみ せい)。同じ歳だった。
見た目とは大いに違い、とても明るく無邪気な彼女でレギュラーになれるまで名前をいつも見ていたと言った聖とは自然と仲良くなっていった。
突然、バレーをやめた名前とはそれから会う術がなく疎遠となってしまっている。
「中等部でも、よく試合してた学校なんだよね…」
「そいや中等部からの子が多いって言ってたわ。でも強いんだよね〜すごいわ。」
項垂れる花を見ていれば、彼女は「あ!」と思い出したように身を起こした。
「じゃああのセッター知ってるんじゃない?東清のっ江波!」
花の口から出されたその名前に、名前は苦笑いをした。
「聖でしょ?まだバレーやってるんだね。」
「やっぱり!この前ね、私じゃないんだけど他の部員の子が名前のこと聞かれたって言ってて…」
「でもその子あたしと同じで高校からだからさ?名前がバレー部だったってこと知らないのよ。聞かれたってことを私に言って来たんだけどね。」と名前の話を聞いてやっと謎が解けたかのような花。
「聖とは仲良かったからね…」
「江波って恐ろしいよね。兄妹揃って。」
その花の言葉に名前は身を乗り出した。
「兄妹揃ってって…もしかしてお兄ちゃんもまだバレーしてるの?」
「うん、そうだよ。男子では知らない人いないだろうし…天童に聞いてみな?」
「…。」
全く、気にしていなかった。
まさか、高校でも関りがあるなんて思ってもいなかったのだから。
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