好きな人は大切に
雰囲気が変わった
▼ ▲ ▼
「先に言っておくけど。別れ話なら聞かないからね。」
名前の後頭部に回された手。
愛おしそうに彼女の髪に顔を埋める天童。
…名前ちゃんだ。
確信すればするほど、彼女を近くに感じたくなる。
背に、そっと回された細い腕。
それが、引き金となった。
髪を退けて、露わになった耳から首筋にかけてキスを落とす。
名前の身体が揺れれば、小さく声が漏れる。
自分で言っておいて何だけどさ…
やっぱり耐えられないよね。
拒まれないあたり、調子乗っちゃうよ?名前ちゃん、わかってる?
その瞬間、瀬見からの助言を思い出した天童は名前にそっと言ってみる。
「名前ちゃん、キスしたい。」
「ダメ?」と聞く天童に、名前は「そういうの、天童はしないって言った。」と言う。
そうだよねぇ…と目を瞑る天童は、彼女を抱きしめる腕の力を強めた。
「それ、撤回したいんだけど…」
「…じゃあ、そーゆーのアリ?」
ってこと?と少し顔を上げた名前の視線に簡単にやられてしまう天童。
「アリにするのいいんだけど、俺もう耐えられそうにないんダヨネ…」
「いいよ、キスして。」
言われてすぐ、たかが切れたように彼女の唇を奪う。
何度も角度を変えて重ねられるそれはお互いの体温を上げるには充分過ぎるほど。
「はぁ…もう…」
甘い声とともに、その場にへたりこんだ名前。
天童は、そんな名前の下顎をつかみ再び唇を重ねる。
誰もいない教室に、彼女の甘い吐息が零れる。
ぎゅっと握られた天童のジャージが肩からズレて落ちていく。
それと共に、名前の身がそっと倒された。
名前のとろんとした視線と、濡れた唇が彼を誘う。
「天童…」と名前を呼ばれては、我慢出来ない。
抱きたい…全部、俺のものにしたい。
「名前ちゃん…」
「っ…あっ…まって…」
「待たない。名前ちゃんが悪いんだよ。」
いつものトーンだが、明らかに違うのは雰囲気だ。
名前の首元のワイシャツはいつの間にか大きく開かれ、そこに口付けてく天童。
たまに舐められては、身を揺らし声を零す名前にすっかり夢中な天童。
そんな彼のジャージの下に見える腕を掴んだ。
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