好きな人は大切に
彼女の表情
▼ ▲ ▼
翌日の朝練後、天童は名前にどういう風に言おうか悩んでいた。
どーしようかなぁ…
英太くんたちの話が正しいなら誤解だって言わなきゃいけない。
うーん、うーんと唸りながら下足ロッカーを通りかかった。
そこで、遭遇した。
名前ちゃんの声…。
聞こえてきた良く知る声。
そして、すぐにでも声をかけたい。
でも、彼女は誰かと話をしている様子。
天童はロッカーに身を隠しながら彼女の様子を伺う。
…可愛い。
そういえば最近あんな風に笑ってくれないなぁ…付き合う前はもっと笑ってくれてた気がする。どうしたら笑うのか…
視線が彼女の奥にいる人物へ移る。
「ん?!」
って、男じゃん!
誰だ〜?アイツ。
名前と親しげに話している相手は爽やかな男。
「天童?何やってんだ。」
「あっ英太くん、ちょーどいいところに。」
嫌な顔をする瀬見の腕を掴む天童。
その後からやってきた白布が「何やってるんですか…」と変な人を見る目でふたりを見る。
「賢二郎もコッチ。」
「……。」
天童に腕を掴まれた二人はその先を覗く。
「おー?男?」と瀬見。
「あ。」と白布が声を上げる。
二人の視線が白布へ向けられた。
「うちのクラスの…」
「え?賢二郎と同じクラスの奴?」
天童が突っ立っている白布を見上げる。
「名前は、忘れましたけど…」
「なんで名前覚えてねぇんだよ…そっちの方が謎だわ。」
瀬見が苦笑いをし、白布と顔を見合わせる。
「まぁ普通にモテるわな。」
「可愛いですもんね。」
「ほんと、天童には勿体ないくらいな。」
「それは同意見です。」
「君たち失礼なこと言ってるよね?」
そんな会話を繰り広げていたら、次に視線を名前たちへ戻した三人の視線が動く。
「ヤバッこっち来る!」
「隠れろっ」
「俺先に行きますよ?」
「賢二郎もコッチ!」
彼女たちがいるロッカーの裏側に身を隠す三人。
名前は爽やかな男を見上げながら楽しげに話す。
その背を見て、天童は「名前ちゃんってあんな顔するんだね。」と呟いた。
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