好きな人は大切に
ダメなヤツ
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「あー、それはアレだね。俺たちがいつも仲良さげにしてるから…あんな風になりたい的なヤツ。」
その言葉に名前は「そうかな…?」と首を少し傾げる。
時は放課後、教室には人は残っておらず天童と名前だけが居た。
名前の今の悩みとなっているのは、花の様子のおかしさ。
天童はそんな名前に「ってかさ?」と据わった目を向けた。
「俺のことはっ?」
「え?」
「俺のことはもういーの?」
「ほら、この前悩んでたやつ、あったじゃんか。」と人差し指を立てる。
名前は、クスッと小さく笑う。
ギョッとした天童は座って居ながらも身を引いた。
「エッ?何で笑う?」
「可愛いなぁと思って…」
「…俺のこと?」
変な人を見るような目で、名前を見つめる天童。
「…ねぇ、天童。」
「ん?なに?」
名前を呼ばれ、引いていた身を今度は前のめりにする。
「好き。」
「……名前ちゃん、それダメなヤツ。」
「え、何で?好きだから好きって言ったんだよ?何がダメ?」
「朝、話したこと、覚えてるデショ?」
朝話したこと…
名前ちゃんとは、そーゆーのナシでちゃんと恋人したいわけ。
あの、よく分からなかった話のことだよね。
うん、と頷く名前。
それに天童は「だからさ?そーゆーのナシ。」と付け加えるように言う。
…好きも、そーゆーのに、入るってこと?
伝えることも、出来ないの?
せっかく、頑張ろうと思った矢先に、そんなこと言うの?
「…やだ。」
「エッ?」
ガタッと立ち上がる名前。
目を見開く天童はパチパチと彼女を見る。
「名前ちゃん?」
「…そんなの…恋人って、言える?」
「…。」
「好きが無くて…天童は不安にならないの?」
言って、思った。
そうだった。
自信が無いのは、私だけだった。と。
「…帰る。」
どうしたらいいのか分からない。
何をどう、伝えたらいいのかわからない。
その場を、何もせず私は逃げ出した。
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