お調子者は相変わらず
彼氏というヤツ
▼ ▲ ▼
「名前ちゃーん!」
翌朝、朝練を終えた天童が靴を履き替え終えた様子の名前に背後から抱き着く。
あ、間違いない。
名前ちゃんの匂い…。
彼女のいい香りに浸っているところに、靴を履き替えたらしい花の姿。
天童の姿を見て表情を歪ませる。
「ゲッ天童…」
「ゲッ花ちゃん…」
お互い様だな…と名前は苦笑いをする。
「ってか、堂々と校内で抱き着くな!!」
「え〜いいじゃん。あ!!花ちゃんも抱き着いて欲しいの?でもゴメンネ。今や名前ちゃんの彼氏というヤツだから。」
あ、と名前が天童を見る。
花は天童の発言に言い返す前に制服の袖を捲り上げる。
「前から思ってたけど、アンタの頭は一度、殴っておかないといけないようね…」
「ねぇ、最近俺思うんだけどさ?花ちゃん、暴力的になったヨネ。」
名前の顔を見て花を指さす天童。
名前はそれより、と天童の制服を引っ張る。
「ん?」と視線を向けた天童。
名前が何か言おうとした時、花が「それはアンタの―…」と天童に向かって言った言葉が途切れた。
「花。」
花の身に影がかかる。
彼女が見上げた先には、柔らかい笑みを向ける男子。
「っ…」
花の顔が一気に紅くなっていく。
天童と名前の視線はすっかり二人に向けられ、固まる。
「…どうも。花がいつもお世話になってます。」
名前と天童を見てニコリと笑うその男子生徒。
天童は口を盾に開いて「え?誰?」と目をパチパチさせる。
名前は「花の彼氏だよ。」と言う。
「…マジで彼氏いたの?!」
ギョッとする天童を見て、花が「アンタが千度言ってた“彼氏というヤツ”よ。」とニヤニヤする。
「ひょえ〜…花ちゃんのカレシか…大変そうダネ。」と遠い目をする天童に花が「やっぱり一発殴っておけばよかった…」と呆れる。
「大変?」と首を傾げる花の彼氏。
「天童が言ったことは気にしないでいーから!行こっ」
「あ…じゃあね、名前ちゃん。」
「あ、はい。」
「…名前ちゃんのこと、知ってたんダネ。」
花に腕を引かれて行った花の彼氏は名前に軽く会釈をしてその場を去る。
見ていた天童が歩いていく彼の背をジッと見つめていた。
「…ってか…今名前ちゃんって呼んだ?!」
「え…うん。」
「…いつから?」
「え?」
「いつから名前ちゃんなわけ?」
じりじりと詰め寄られる名前。
しかし、思いついたことが一つあった。
「…天童だって花ちゃん呼びでしょ?それと同じ。」
天童はそれを聞くと、身を彼女から離し、据わった視線を名前に向けた。
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