Short Story | ナノ


▼ ねぇ、そっちにいたいの?

面倒くさいことは嫌い。


『研磨さん!トスあげてください!』

「…はぁ。」


リエーフとの息は、結構合ってきてる、と思う。
けど、いざって時にミスをする。

それをできるだけ減らしたい。


リエーフと共に部室を出て練習をした。


早く帰ってゲームしたい。


部活を終えれば帰れる。
もうたぶん…面倒くさいことはない。


着替えを終えれば、ゲームができる。


『はえーなぁおい。』


クロの苦笑いを無視して先に帰ろうとすれば、止められた。
せっかく帰ってゲームしようとしてたのに…


『早く帰ってゲームしようと思ってたんだろー。』


読まれた…。



やっと帰れる…。そう思ったときに、クロの様子がおかしい。


「なに?どうかした?」


そう聞けば、クロは「わり、ちょっと待っててくれ。部室に忘れた。」と部室へ引き返していった。


何を…?

そう思ったが、トボトボと門を出て先を急ぐ。
クロなら、すぐ追いつくと思う。


ゲームをしながら、いつもの如く歩いてた…だけだから、いつもと何ら変わりないはずなのに…


『音駒の子、かわいーこ多いよねぇ』

「え…」

『俺ら隣の学校なんだけど…』

「はぁ…」


うちの制服の女子が…絡まれてる?


眉間に思いっきり皺を寄せた研磨の脳内ではどうしようかと思考を巡らせていた。


なんで今日…こんなに面倒くさいことに巻き込まれるんだろう。
いつもと何も変わらないはずじゃん。


…はやくクロ来ないかな。


とりあえず、通ってみよう。
ゲームをしたまま隣を通り過ぎようとした。


『ねぇいーじゃん。ちょっと遊ぶだけだからさ?』

「…しつこい。」

『あ?』

『なんつった?今。』


うわ…。
今、あの人(女)絶対余計なこと言った。

研磨の表情がピクリと動く。


その女の子の視線が、ちらっと研磨の方へ向けられた。
目が合う…二人。


『孤爪くん!』

「っ…」


『あ?』と周りで彼女を囲っていた男たちが視線を研磨へ向けた。
研磨は「誰?」と眉間に皺を寄せるも、もう、どうしたって逃げられるような状況ではないと悟る。


ゲームを両手にちらっと男たちへ視線を向ける研磨。
敵視がこちらへ向けられている。


なんで、きょうは…。



「しょーもないことしてないで、ちゃんと1人の女の子と付き合ったほうが将来的にも早く幸せになれると思うけど。」

『あ?なんだと?!』

「そうやって知らない人相手にしてる時間が勿体ないって言ってんの。」

『このプリン頭っ!』


殴られるのだけは避けたいけど…。


チラッと高校の方を見ると、黒尾の姿を発見した研磨。


『はいはい。ストーップ。』


研磨の前に現れたのは、先ほど忘れ物を取りに帰った黒尾の姿。
背の高い黒尾を見上げる男たち。


『えっと…うちのが何か?』


いつもと何ら変わりない貼り付けた笑顔を向けているんだろうな、と考えながら両手に持ったゲームを再開する。

相変わらず男たちの向こう側にいる彼女を呼んだ。



「ねえ、そっちにいたいの?」

『え?』

「こっち来たら?」



パタパタと黒尾の背に逃げ込む女の子。



「で、名前は?」

「あ…苗字名前。」

『は?おま…なに、知ってる子じゃねぇの?』

「違う。」



黒尾が呆れる。


『じゃあ…お手柔らかに言っておきますか。』


この後、黒尾によって彼らに理屈のオンパレードが話された。


ぇ、そっちにいたいの?
饒舌な言葉攻撃


-END-

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